複雑・ファジー小説

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=  第二げえむ開始です ( No.66 )
日時: 2011/11/11 20:01
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: z9DnoDxA)

第四十話 行動開始







「かくれんぼスタート、か・・・」

 制限時間はたったの三日、その時間の無さに楓はため息を吐いた。仇無は、アダムはもう一人の参加者は楓の知り合いの中にいると断言した。だがそれは自分の知らない人間ではないと言われただけで、あまりヒントとしては活用できない。だから、もう一つのヒントで考えようと楓は思った。
 もう一つのヒント、それは元の世界とこの世界で違っている一点は最近ブームになっていることについて、少し異なるところがあるのだと。そう言われて出てくるものは一つ、最近流行っていると言えば、この学校ではおそらく小説だろう。
 そういう訳で知り合いの、あのサイトで執筆している人をしらみつぶしにしようとしていた。隣に座る乙海と赤弥は後でも大丈夫だと判断した楓は他のクラスに赴いた。
 ドアを開けてすぐ、右に曲がり、すぐにまた右折して隣のクラスに入る。あまり、自分から女子に話しかけるのは得意じゃないんだけど、と楓は疲れたように足取りを重くした。
 どこに座っているだろうかと目を凝らす。窓際の座席の真ん中の列に座っているのがすぐに分かった。彼女の周りには何だか静かな雰囲気が漂っているし、一人だけ教室で本を読んでいる。

「・・・・・楓か。何の用?」

 漆黒の長い髪を揺らして、顔を上げる。このクラスの学級委員である青宮葉月。中学校以来の付き合いなのでちょっとした顔見知りだ。清潔で、不動の水のように落ちついたその性格は、中々他の者を寄せ付けない雰囲気が漂っている。そしてその青い瞳は、雲一つなく澄み渡るあの青空のように、透明感で、どこまでも落ちていけそうあった。

「ちょっと・・・訊きたいことがあってな」

 訊きたいことがある、それは別に嘘にはならなかった。月に一度、学年で集まって連絡事やクラブでの表彰を行う月例集会というものが明日開かれる。その司会などは楓や青宮を含む学級委員が行う。その時に楓は乙海に試合での表彰状を渡す仕事を命じられたのだが、初の仕事なので一度したことのある青宮に訊いておきたかったということだ。
 その旨を伝えると、ああと小さく呟いて、説明を始めてくれた。その出番が来たら先生が症状を渡すから、誰かが乙海の名前を呼んで、彼女が出てきたら書いてあることをそのまま読んで渡せばよいと。
 学年で二番目に賢い奴の説明だ。分かりにくい訳が無く、楓は特に訊きなおす所は無かった。そこで本題に入ろうと気持ちを落ちつかせる。

「執筆続いてる?」

 青宮は、今と同じようなことで相談していた時に乱入してきた赤弥にしつこく誘われてやはりその流行に無理やり乗らされた。まあ、それなりに楽しんでいると聞いたことがある。
 代表作品は『光の堕天使』。ある日突然天使の夫婦から堕天使が生まれた。その子の名前はルエ。仲間たちと闘って成長していく話。お客様も多く参照も多いと赤弥が言っていたと、楓は思い出した。

「ぼちぼち。楓はしないのか?」
「俺はね・・・そうだ・・・」

 おそらく変わっている点は無いだろうが、何か会った時ように話を掘り下げられるよう、ちょっとした嘘を吐いてみようと思った。そのような嘘かというと、執筆を始めようか悩んでいるという手の。

「どういうジャンル?」
「主人公が理不尽なゲームに巻き込まれて死線を掻い潜って生き抜く話」
「ダークだね。・・・でも、頭使いそうだから、楓に合ってるかも」

 正確には小説を書くと言うより、我が身に降りかかったことを綴ると言った方が正しいかもしれない。どうせ書くのはイグザムとかからの逃走劇だ。
 タイトルを訊かれて少し焦り、適当に『DARK GAME』と答えた。そのまんまだなと、鼻で笑われて少し楓は肩を落としたが、話を続けようとする。
 だが、教室の中に教師が入って来たことからすぐに察した。もう二時間目が始まってしまうと。
 その教室を後にしながら楓は二時間目が何か思い出す。二時間目は国語、次もすぐに動くことが出来ると握りこぶしを作ったがすぐにそれは緩んだ。
 良く思い出すと三時間目が科学の実験、その後芸術で二重の移動授業なのだ。二つとも教室からは遠いので、昼休みまで待たないといけないということが発覚した。
 その時に、青宮が最後に話しかけてきた。

「次は負けないから」
「何に?」
「成績」

 そういう短い会話が終わり、本当に時間が不味くなった楓は教室に戻った。いや、入ろうとした。
 自分の教室に何だか人だかりが出来ていることに驚きを覚えたがすぐに思い出した。氷室に野次馬が群がっているだけだということを。
 これはこれで面倒だと思った楓は鬱陶しそうにドア付近の奴の肩を叩いた。申し訳なさそうにその場を退いてくれたのだが、その状況をもう一度眺めて楓は絶句した。
 群がっているのは全員男子、どんだけ面食いが揃っているのだと嘆息する。中心の氷室も表面はまだ柔和だが、神経がピリピリしているように見える。
 こいつら何なんだと溜息を吐いて席に着いた。もう古典の教師は教壇に立っている。
 どこかに行っていたのか、乙海が帰ってきた。横には赤弥がセットでいる。座席に戻ってすぐに乙海は楓につい先ほど言われたであろうことを報告した。

「楓、昼休み陸上部集合って竹永先輩が言ってた」

 ああ、昼休みも潰れるのだと楓は深い深いため息を吐いた。



                                            続きます



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完全に言い忘れてたー。
ということでさらっと楓が学級委員だとこの話に書いておきました。
後、乙海は陸上部員でも速いってことになってますね、賞状貰ってますし。
氷室と青宮似てるから今度二人で何かさせようかと考えたり案が浮かばなかったり。
では、次回に続きます。