複雑・ファジー小説

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 第四十二話更新 ( No.69 )
日時: 2011/11/18 20:29
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: tDghPMhC)

第四十三話 先輩陣







 一日目は大した収穫も無く終わってしまった。そういうことから楓は気を引き締め直していた。制限時間はもう残り四十八時間、つまりは後二日程度しか残っていない。
 ここで、楓は一人一人可能性のある人物の中でも、昨日接触した人物についてを振り返ってみる。しかし、それほど良い結果は得られなかった。本当に小説がキーワードなのだとしたら、普段読んでいるだけの自分には詳しい事は分からない。よって、小説連載陣全員に話を訊きだして一人だけ妙な発言のする奴が当たりだが、まだ見つかっていないので保留。
 次に竹永と氷室についてだが、少なくとも竹永は「本?小説?五秒で飽きる」と言っていた記憶が楓にはあったのでまずカキコには一切関係が無い。
 次に候補となって現れるのは氷室なのだが、まず無いと思われる。というよりも転校してきたのはいいが、それ以降一度たりともコンタクトを取っていない。向こうも取ろうとはしていないようだ。

「先輩とは大違いだな」

 浅くだが、そこに消え入るような溜息を吐いた。いくら薄着しようとしても緩和されることの無い暑さもかなり鬱陶しい。でも、今このタイミングでまたしても何かが楓の中で引っかかった。
 重要なことを忘れているような感覚、その原因は未だによく分からない。考えてもその答えが浮かんでくる気配は無い。
 というより、もしかしたら嫌われているかもしれないなと、楓は苦笑する。ただ単に時間が無かっただけでヴァルハラの使者に『過去の事実』を突きつけられたところで怒りが収まらなかったとすると、話もしたくないのだろう。

「まあ、嫌われても文句は言えねえな」

 それはそうだと、彼は心の中で繰り返す。告白なんてされて、それが別に本心から出たものではないと聞かされたのなら、普通の女子なら怒って当然だ。人一倍プライドの高い氷室ならば、なお当然だ。
 というかそもそも自分たち二人に記憶はたまたま残っていたが、氷室には残っていない可能性も無いと考えられる。自分たちのところにだけ、竹永と楓をピンポイントに狙ったような招待状が来たのだ。
 氷室は巻き込まれた被害者、または楓の動揺を招くための存在だったとしたら、次の『げえむ』に出す必要も無い。
 そのように、適当に考えながら進んでいると、後ろから軽く小突かれた。このノリで絡んでくるのは大概赤弥なので、今日もそうだろうと思って振り返ると目に入ったのはカッターシャツだった。ということは男。しかも二年生の証である青のバッジを胸に付けていた。

「神田さん!」

 神田桐哉、楓のいる高校の一つ学年が上の先輩だ。ちょっと周りから見たら怖そうな顔をしているが、それは性格的に自分の心の本意を中々伝えることができないだけで、とても面倒見が良い楓にとって兄貴的な存在。それほど自分としても悪い方の道に踏み込むつもりは一切無く、紙を馬鹿みたいに伸ばす事も無く、ケバケバしく染めるようなこともない、黒髪の短髪。

「元気してっか?最近中々顔見なかったからよ」

 最初に彼に会ったのは月例集会の打ち合わせをしている時に、上の学年の学級委員をしている彼と少し話をしたからだ。神田と楓は共に、誰もしないならやってやろうという軽い人助け的な流れで立候補して、面倒な仕事ばかりの委員になったということだ。
 小説ブームに火を付けたのは、彼とその一つ上の先輩のバスケットボール部コンビで、神田が『花屑と狂夜月』、そして『他人の不幸は毒の味』を掛け持ちで連載している。
 大概その二人は一緒に動いているので大方今も共にいるのだろうと思い、横に目をやるとやはりそこにその人はいた。

「お前が、青宮の言っていた奴か」

 青宮が体育館の中からクラブ中に出てきたのを見かけた覚えが楓にはある。だから、体育館内系の部活だとは知っていたのだが、どこかは知らなかった。だがここではっきりする、バスケットボール部の選手、またはマネージャーだと。
 基本的にこの先輩はバスケットボールの腕前で女子から人気が高いが、あまり自分から人と関わろうとしない。部活仲間だけを別として。
 大谷要(おおや かなめ)、三年生の体育科の人間。この学校は進学校と体育科という二面性を持つため、部活に関する取り決めはちょっと特殊である。普通科は八月までに止めるのが鉄則、体育科は自由。よって、要はまだ部活を引退していない。
 眼鏡をかけていて、一見知的な人間に思われがちだが、どちらかというと本業はスポーツ。勉強派体育科の中でも上位にいる。発せられる冷たい空気は氷室のような少し人間嫌いのようなものでなく、青宮のような落ちついた感じから来るもので、刺々しくなく、クールに映る。
 この先輩が書いているのが、『REVERSE WORLD』、ファジー板にある戦争ものの物語で、訓練の結果では散々だった主人公、野々村仁が戦場にていきなり頭角を現して活躍する、そして戦争はより過酷に・・・といった物語。

「名前は・・・・・楓だったか?」
「はい・・!知ってらっしゃるんですか?」

 先日の鬼ごっこの一件で敬語を乱用していたので、かなり板に付いてきているなと、溜息を吐く。もちろん不快感を与えないように隠れてだ。

「それは青宮じゃなくて青宮と話している女子の口から出たんだけどな」

 青宮と話すほど仲が良いのは、赤弥・乙海の二人組だ。発せられる冷たい雰囲気を赤弥の明るい方の部分が突き進み、乙海もついていくように話すようにして仲良くなった。
 学校の中でも有名な先輩に名前を覚えられているyことが、楓にとって光栄だった。話しかけられるのは初めてのことだと、楓は思い出す。
 だが、ちょっとした失望も抱えていた。特に奇妙な点は無いと、つまりはかくれんぼに対するヒントが見つからなかったと。

「おい、朝練遅れんぞ」

 そのいきなりの要の呼びかけに神田が反応する。楓も思いだす。陸上部にも朝練があるのだと。そこから、グラウンドと体育館の方向は違うので楓は孤立して、グラウンドに向かった。





                                              続きます



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二日目も始まりました。
そして募集キャラ二名登場。
では、次回に続きます。