複雑・ファジー小説

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 第四十四話更新 ( No.73 )
日時: 2011/11/24 18:30
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 6CqIKfIj)

第四十五話 第二げえむ終了 part1









「おい楓ー、何いきなり速くなってんだよー」

 冷たい水の中からプールサイドに上がった楓はいきなり一緒に泳いだ三人に囲まれた。別に、一人速かったことに対する怒りや憎悪は当然のごとくなく、冷やかすようにニヤニヤしている。いや、そもそもこれぐらいで怒る理由すら無いしな。







——————————普通ならな






 誰かの声が、脳裏に響いたような気がした。この声を楓は聞いたことがあった。いや、あったはずなのだが誰の声なのか思い出せない。ただ、その声を聞いた時に楓は言いようの無い恐怖に襲われた。背筋が冷たく凍りつくようになるのと対照的に、頭の中は対照的に熱くなる。楽しげに熱くなるのではなく、流した涙の熱————。
 これって一体誰だったっけと自問自答する。もう一人の冷静な自分が声をかける。必ずそれは良い記憶ではないぞと。脅迫するように、目を鋭く尖らせて口の端を上げて妖しげに笑いながら、自分を落とし入れて楽しむ者そっくりの眼差しを持った、自分が告げている。
 でもその妙な自分の姿は、自分ではなく誰かの影に自分の姿を映しているのだと分かる。理由は、段々とその自分の影はぼやけていき、さらにその深奥のある一点に小学生高学年といった男子のシルエットが見受けられたからだ。
 楓にはこの記憶がどういうものだったのか、忘れていた。もう一人の自分が、楓を守るために思いだすことを拒絶していた。


 そしてそのマイナス方向の感情は、氷室と目が合った瞬間に、最も強くなった。


「おい、楓聞いてんのか?」

 顔面蒼白といった表情で呆然とし、返答しない楓に心配した三人が声をかける。その一言でようやく、彼は我に帰った。

「ああ、すまねえな。コツ掴んじまったみたいだ」

 得意げに笑いながら楓はそう返した。このやろうと言いながら、三人は冷やかしの声を次々に、またしても浴びせてくる。わざと大げさに反応してみせた楓が精いっぱいに抵抗する。次の集団がスタートするから静かにしろと注意されて四人はようやく静かになった。
 やっぱり代介の言うとおり、この世界は楽しんでみてなんぼのものらしい。急に胸の中で関西弁になってしまったことに自分で突っ込むとより可笑しく思い、楽しくなった。
 このことが後の楓の精神<こころ>を壊さなかった要因になるのかもしれない。あの、ほとぼりの冷めた声の主から——。











 四時間目の授業も終わりその日最後の授業が始まった時に、忘れていた焦燥が息を吹き返したかのように舞い戻ってきた。今日中に決めないと、もう一人の参加者にコンタクトを取るのが難しくなるどころか、アダムとも会話ができなくなる。つまりは、回答を告げる事ができなくなる。そうなると強制的にゲームオーバーだということだ。
 何としても今日中に見つけ出さないといけないなと思った矢先に、ちらりと教室中を見渡した。今楓が怪しいと睨んでいる候補者は全体集合としてクラスメート全員、そして担任の教師だった。
 仇無がこの教室を出る機会は移動教室、そして登下校以外はほとんど無いとの証言が入っている。つまりはルール説明をしたのはこのクラスの人間の前だけということになる。
 その中でも特に目を付けているのは三人。自分の暮らしている現実<世界>と違っている点は元の世界で流行しだしたものについてらしい。つまりは小説の書き手に回っている者が可能性が高いと彼は踏んだ。この教室で言うならば赤弥と乙海。代介は体育は同じだが、隣のクラス、要するに青宮のクラスだ。
 そして最後の一人がちょっと的の外れそうな人物になるのだが、氷室冷河だ。氷室にまつわる不可解な証言が数多く存在しているので疑っているのだが、正直この辺りに越してきたのはつい昨日。この辺りのことなどろくに知りもしない氷室を疑うのは不可能だと思っている。
 始業の合図であるチャイムが鳴って五分も経ったようやくのそのタイミングに五時間目の家庭科の先生が入ってきた。このおばさんは都市伝説マニア、というよりもオカルト大好き人間だと生徒から呼ばれている。

「今日の都市伝説コーナー」

 また始まったよと楓はため息を吐いた。この人はオカルトを布教したいのかは分からないが、授業の最初の時間を使って都市伝説について語りだす。

「本日紹介するのは———————————」

 聞く必要は無いと、楓は黙々と授業の準備をしだした。唯一の救いは家庭科が週一だということ。週に二回以上こんなもの聞いていられるかといつも思っている。
 そう言えば、『あれ』を先週から実施していることを楓は思い出した。いっそのこと実話なので言い放ってやるかと楓は決心したのだがそれを口に出すことは無かった。
 なぜなら、『あれ』が行われなかったからだ。




 パズルのピースは、これで全て集まったようだ。




                                                続きます


____________________________________________________


今回は一旦保留、は抜きでした。
良かった良かった・・・
でも今回改行やダッシュ多いんで読みづらいかもですがね。
次回次次回で二章を終わらせたいですね。
相当な急展開で本当、申し訳ありませんでした。



さてと、三章の告知を前回同様(?)しちゃいましょうかね。

1、この次の日とさらに翌日、要するに陸上の試合が舞台の話。でも陸上部分はそれほど重要ではない。

2、二章初登場キャラの、代介、乙海も登場。だって陸上部ですから。

3、この話しの前半と、大いに関わりがあります。

4、三章のタイトルは……おそらく『楓秀也編』です

5、げえむ一切関係ないです。

では、次回に続きます。