複雑・ファジー小説
- Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 第四十五話更新 ( No.76 )
- 日時: 2011/11/26 19:46
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 6CqIKfIj)
- 参照: 今回会話ばっかりです、すいません。
第四十六話 第二げえむ終了 part2
五時間目が終わり、放課後に突入した途端に、楓はすぐさま二年生の教室に向かっていた。まずは体育科の棟に向かう。このことから、会いに行く相手は大体限られる。楓が自分から赴こうと思えるような者で、二年生の体育科の者、そしてげえむにまつわっている人間と言えばあの人しかいない。
「もうすでにオカルトマニア先生から確認は取った。後は先輩の所に……」
そう、楓は現在竹永の所にへと向かっていた。竹永にはげえむをクリアするための、最後の確証を得るために接触しようとしている。何にせよ時間が無いのだ。帰宅部の『あいつ』が帰ってしまう前に行かないといけないと、その歩調は見る間に早くなっていく。
もうまさに体育科の棟に入ろうとしたその時に、彼の探している棟の本人である竹永は調度良く出てきてくれた。もうすでに練習用のウェアに着替えている。隣に並んで歩いている楓とは面識の無い先輩と歩いていたが、足音ですぐに気付いたようだ。
「おう楓、どうした? 明日についてか?」
「いえ、一つ訊きたいことがあるんです」
「何だ? 言ってみ」
楓にいち早く気付いた竹永は自分からすぐに声をかけてくれた。後輩だと察してくれたのか隣の先輩も少し引き下がってくれた。そんな中で楓は質問があると言った。試合の事以外に何が訊きたいのか分からない竹永は、楓に訊き返した。
「うちのクラスの転校生、氷室冷河について知っていますか?」
「えっと……私の知り合いにそんな名前の奴はいないわよ。それがどうかした?」
「いえ、大丈夫です、分かりました。……ありがとうございました!」
お礼の言葉だけ言い残して逃げるように楓は駆け出した。これで、集まったパズルのピースを入れる枠がようやく完成したと断言できた。全てにおいて理屈も通る。
「あいつが……あいつがもう一人の参加者だ」
楓は、できるだけ急いで教室に向かっていた。仇無もそうだが、あいつが、氷室が帰る前に教室に戻って、答えを告げないといけない。
「氷室が、見つけるべき参加者だ」
そう呟いて、周りから当てられるやや冷たい視線を気にせず走る。形振りは構っていられない。自分の身だけではない。このパラレルワールド全体も助けないといけないのだから。
もう一度、間違いの無いように楓は頭の中で自分の理屈を組み立てる。一つ一つ積み上げて、もう一度納得する。そうしている間に教室の前に斗たどり着いた。感傷に浸っている暇は無いと、切羽詰まったようにドアを引いて開けた。
教室の中を見渡すと、誰かがそのための舞台を用意したかのように氷室と仇無……アダムの二人の姿しか無かった。急いで走ってきたので、上がっている息を落ちつけて楓は二人を見据えた。間に合ったと、心の中で安堵のため息を吐く。
「楓くーん、そんなに慌ててどうかしたのかな?」
「大体は、理解できてんだろ? 解答を突きつけにきたんだよ」
それは楽しみだと、いつも通りふざけた様子で返事をする。相変わらず忌々しい奴だと、声に出さず吐き捨てる。
「で、誰なのかな? 早く言いなよ」
「氷室だ」
「根拠は?」
誰か訊いたその問いにぴったり合わせて全く隙を与えずに答える、氷室という解答を。するといきなりそう判断した理由を訊いてきた。往生際の悪い子供のような素振りが、これが合っていると裏付けているようだった。
「まず俺は、ここが何についてのもしものパラレルワールドなのか考えた。お前が最近流行になっている何かと言ったから、この学校では小説だろうと踏んで、赤弥や青宮、神田さんとコンタクトを取った」
「へ〜、だったら氷室ちゃんじゃないでしょ? 引っ越してきたばかりなんだから」
そう言ってくると思ったと、楓は唇の端を上げた。
「それは実は間違っていた。条件は、小説じゃなかった。お前は俺に氷室がこのげえむには関係無いと錯覚させるためにわざとヒントをあの言い方で言ったんだ。でも、家庭科の先生のおかげで分かったんだ。キーワードは『都市伝説』だって」
急に、さっきまで反論をしていたアダムが黙り込む。やはりそういうことだったかと、楓の胸の中は高揚感に包まれる。
「最近この辺りで流行りかけている都市伝説。招待状が届いたら裏の世界に迷い込む。そこでは夜な夜な残酷なげえむが行われている。どうしてだろうな? お前たちの鬼ごっこそっくりだ。俺たちがクリアするまで、鬼ごっこは毎晩行われていた。だからスタートの段階であんなに骸骨の兵団がいたんだろ。そえは置いておいて、その都市伝説はお前たちの行為そのものだった。そしてその都市伝説はこの辺りで流行している上に氷室も巻き込まれている。題材にするにはぴったりだった」
「へえ……」
「そしてさっきオカルト好きの先生に訊いたけど、その都市伝説に関する記憶が無くなってた。先週に開始を宣言したその都市伝説に関する情報収集の部門が今日行われなかったからな。しかも、先輩にも訊いたけど、氷室のことを知らなかった。つまり、俺と氷室以外の記憶から、その都市伝説の記憶がスッポリ抜け落ちてた」
「じゃあどうして氷室ちゃんって分かったのかな?」
明らかにこいつは動揺していると、楓には断言できた。冷や汗のようなものが浮かんでいる上、笑みは引きつっている。そして幾分か声が震えている。
「俺を責め立てなかったからだ。空港で会った時、最初にあいつは俺の信用を失わせるために竹永達にあのことについて話しだした。なのに、クラスという、暴露して俺の印象を下げるうってつけの空間で何も言わなかったってことは、第一げえむでヴァルハラの使者から受け取った記憶で幾分か怒りが薄れているからだろ」
「ヴァルハラの使者……だって?」
妙なところにアダムが反応したが、今は関係無い。話しの続きを口から出す。
「それに、野球部の奴の話と俺の記憶を照らし合わせると俺と氷室は同じタイミングで眩暈に襲われた。これはおそらくパラレルワールドに踏み込んだサインだ」
ついに、アダムは抵抗を止めて黙り込んだ。今までのふざけた口調とは打って変わって眉間にしわを寄せて、忌々しげにこっちを睨みつけていた。
楓から声をかけようと思ったが、その瞬間にアダムは絶叫した。
「分かったよ!! げえむクリアだ! くそ、あのバカガミが・・・・・・人間なんかに肩入れしやがって……」
何か意味不明のことを口走っているが、どうやら一応げえむはクリアらしい。ホッと息を吐こうと思ったが、どうやらこの状況では気を抜けそうにもない。
だがそれでも、第二のげえむは終わる————。
続きます
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今回長いから何も書きません。
会話ばっかりでごめんなさい、ではまた次回に続きます。