複雑・ファジー小説
- Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 鬼ごっこ編第八話更新 ( No.9 )
- 日時: 2011/09/23 21:12
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: /tWbIoNn)
第九話 本当のげえむ名
「さあ、外に出るわよ」
竹永に連れられるままに三人は空港から外に出た。まだ、鬼が迫って来ている気配は無い。それでも、周囲に気を張り巡らせて、慎重に外に出る。辺りを注意深く見回してみる。
どうやら、今のところ周りに鬼はいないようだ。竹永の手招きに合わせて三人も建物から出る。西の方から、人々の断末魔の叫び声のような声とは到底思えないような騒音が聞こえてくる。
改めて、今行われていることの意味を理解し、身体の奥に寒気が走る。それは、楓だけでなく楠城や叶、そして、冷河も同じだった。
「むごい・・・」
青ざめた表情で、目には寒気を浮かべて、恐れるように声を震わせて冷河はそう言った。少し自己中心的なところもあるが、やはり根は情に熱かったり、心優しいのかもしれない。そういう、ちゃんと普通の人らしい感覚を持っていることに、楓は安堵した。
そもそも、自己中心的な心というものは、自分に対して特に情に熱い者がそう呼ばれるのだろう。氷室の場合、自分に対する情もそうだが、他の人に対するそれもかなり熱いのであろう。その声は、目に見えぬ『げえむ』の主催者に向けた怒りもこもっていた。
「とりあえず、ここは袋小路になっているからさっさと向こうの交差点まで行きましょう。こっちに来たらジ・エンドよ」
前方の、ここに来た時にも通った大きな交差点を指差して竹永は駆け出した。スタートの時間ですでに日は落ちていて、街灯が灯されていたぐらいなのだから、もうすでにかなりの時間にはなっているはずだ。まず、八時になったら招待状に吸い込まれるようにしてこの裏側の世界に来た。そして、若干ルールの説明で時間が潰れたからおそらくげえむが始まったのは十分後ぐらいだ。
今の時間はおおよそ九時。まだ後二十三時間も逃げ続けなければならない。はっきり言って気が遠くなりそうだ。
この短時間に、一体何人の人が鬼の被害にあったのだろうか。アスファルトの上を走りながらそう考えた。おそらく、その数は夥しいものだろう。元いた辺りの通りに戻ったらもしかしたら死体とかが並んでいるかもしれない。そんな嫌なことを考えながら、交差点を曲がると、奇妙な光景を目にした。
建物は倒壊している。爆発の痕跡や、銃痕が辺りにいくつもいくつも観察できる。黒く焦げた紅い液体はいろんなところに飛び散っている。おそらく、ここでは何人もの被害者が出たのだろう。だが、ある一点において、極めて不自然なことがある。
—————死体が一つも無い。その骨の、欠片すら
血しぶきの上がった後がある。銃が乱射された痕跡も残っている。だが、肝心の血しぶきを上げた本人が、撃たれた人間のなれの果ての姿が見当たらないのだ。
よく分からないことに首をかしげる。何がどうなってこうなったのだろうか。考えてもさっぱり分からない。そんな中いきなり、上空にルール説明のときと同じ要領で空にスクリーンが現れた。
そこには、生々しい人の死体があった。これ以上言うと言っている自分で吐きそうなので抑えるが、急所を銃で貫かれた一体の死体が映し出された。
「悪趣味ね!こういうの!」
空に向かって冷河が吠える。怒り、猛り狂う闘犬が牙を向いて威嚇するように、主催者に叫び、問いかけた。
「仕方ないでしょ、ルールの詳しい解説を入れようと思ってさ」
「詳しいルール?」
聞きなおしてみてから分かった。このげえむはおそらくただの鬼ごっこではないのだと。確かにもうすでにこれは鬼ごっことは到底呼べない。でも、今言っているのはそれとは少し違う意味だ。
「じゃ、聞くけど、鬼ごっこのルールちゃんと知ってる?」
「知っているさ」
横にいる楠城が冷たく天に言い放った。憎悪と憤怒が、氷室と同様にその声音に浮かんでいる。
「じゃ、骸骨ってどんなものか分かっている?」
やはりそうだ。つい今しがた予想した自分の考えが正しいことを直観する。だとすると、やはりこれは相当えぐいルールということになる。
「鬼ごっこというのはね、タッチされたら鬼になるんだ。そんなのは日本人としての常識だよね、日本人にとっては」
日本人日本人と五月蠅いな、と思ったがよく思い返すとここには外国人も招待されている。そういう言い方になった方が普通というものだ。
「そして、骸骨っていうのは死人のなれの果ての姿だよ。これは万国共通で分かるよね?このげえむでのタッチは銃で撃ったり爆撃したりだろ?とすると生きている人も死人に変わってしまう。そして最終的に・・・」
天空のスクリーンに映る骸が、尋常ではないスピードで風化していく。サラサラと肉が剥がれ落ち、白骨が姿を現した。その身を包んでいた衣服が突然分解され、再構成が始まる。再び形を取り戻した服の柄は、迷彩柄だった。
「骸骨になってしまう」
もう、これで生き残っている人間の頭の中には一つの答えがよぎっただろう。恐ろしい、答えが。
「要約すると、この鬼ごっこでタッチに値することをされるとその人は死んでしまう。死んでしまったら骸骨になるし、そのまま都合よく鬼にも変われるだろ。要するにこれはただの鬼ごっこじゃないんだ。これは・・・」
意味ありげに、そこで一拍開けた後に心底嫌らしくあの声は最後にこう付け足した。そして、映像の中の骸骨の、指先が動いた。
「増え鬼なんだ」
続く
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増え鬼って知ってる?
鬼は交代せずにタッチされた人は全員鬼になるんだよ