複雑・ファジー小説

Re: モンスターの国のアリス〜異世界トリップファンタジー〜 ( No.21 )
日時: 2011/09/05 22:27
名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)

「次は誰を探すの?」
 
 吸血鬼が笑顔で聞いた。外に出た吸血鬼は黒いフードを着ている。やっぱり太陽が苦手らしい。

「うーん、とりあえず狼男とか。でも居場所が分からないのよね」

「……お前予知能力かなんかもってなかったか?」

 ミイラ男の言葉で思い出した。そうだ、私は予知能力が使えるんだ。

「たしか崖の下に……ってきゃあ!」

「どうした!?」

「あ、あれ……!」

 私の前に1体のモンスターが現れた。そのモンスターはトカゲに似ているけど大きくて、ギョロリとした目は1つしかない。モンスターは人型ばかりじゃないんだった。すごく恐ろしい姿をしている。

「ご、ごめんなさーーーい!!!」

 逃げるしかないだろう。しかも追いかけてくるし。

「お、おい待て! そっちにはたしか崖が……」 

「きゃあ!」

 落ちる—! 

Re: モンスターの国のアリス〜異世界トリップファンタジー〜 ( No.22 )
日時: 2011/09/05 22:30
名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)

「ん……」

 痛くない……?あんな高い所から落ちたのに……。
 ていうかなんだこのザラザラな舌で顔を舐めているのは……。

「……犬?」

「犬じゃねえ!狼だ!」
 
 怒鳴られた。どうみても犬だし……。

「せっかくオイラが助けてやったっていうのに、なんだソレ!」

「あんたが? 犬じゃ無理でしょ」

「じゃあ見てろ!」

 すると犬は狼に変化した。

「狼!?」

「どうだ驚いたか」

「実物初めて見たぁ!」

 がくっと狼は倒れる。

「驚かないんだな。変な奴」

「狼じゃないとか疑ってゴメンね。助けてくれてありがとう」

「お、おうよ! んじゃあご褒美!」

「え?」

 ご褒美って? そんなもの持ってない。

「オイラ腹減ってるんだ」

「でも私食べ物持ってないわ」

「あるじゃねえか。アンタだよ」

「わっ、私ぃっ!?」

「助けてやったんだから。人間は狼にとってご馳走だ」

 食べられるのだけはごめんだ! 誰か助けて!

Re: モンスターの国のアリス〜異世界トリップファンタジー〜 ( No.23 )
日時: 2011/09/05 22:32
名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)

「よしなさい」
 
 しゃがれた声が聞こえた。狼の動きが止まる。

「すまなかったね。うちの孫が」
 
 木の後ろから老人が出てきた。うちの孫ってことはこの狼のおじいさん?

「後で肉をやるから大人しくしなさい」

「はーい。じいちゃん……」
 
 狼は残念そうに私を見ている。

「あなたは人間? ですよね……」
 
 私は老人に問いかける。

「わしらは狼人間の種族でな、満月の夜以外は人間の姿なんじゃ」

「えっ、じゃああなたのお孫さんは?」
 
 人間の姿じゃない。

「不思議なことにな、この子は満月の夜にしか人間になれんのじゃ」
 
 老人は悲しそうに狼を見ている。そっか、ちょっとひどいこと言っちゃったな。

「だからいつも犬のような姿なんだ。でも戦ったり獲物を捕まえるときは、ちゃんと狼の姿になれるんだぜ!」

 この狼は私の探している狼人間なのかな?

「あの、もし良かったら一緒に宝探ししない? なんでも願いが叶うっ
ていう幻の宝物なんだけど……」

 物語の主人公が言ったことを同じように言う。

「お宝!?」
 
 狼……改めて狼男は目を輝かせて話しに食いついてきた。

「なんでも叶うんだな!?」
 
 さらに目の輝きが増す。

「ならオイラついていく! そして願いを叶えて腹いっぱい肉を喰う! いいだろじいちゃん!?」

「ああ」

「信じてくれるの?」

「なんで疑わなければならないんだ?」

「え」

「もし嘘ついてたらオイラ、アンタを喰い殺すかもしれねえけどな」

 嘘ついちゃダメだ。こいつだけには。

Re: モンスターの国のアリス〜異世界トリップファンタジー〜 ( No.24 )
日時: 2011/09/05 22:34
名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)

「おーい!」

 吸血鬼がミイラ男を連れて走ってきた。

「ご無事でしたか。姫」

「ほら、別に助けなくても平気だったじゃねえか。
……まあ無事で良かった」

ミイラ男……。心配してくれたんだ。意外。

「そういやアンタ名前は?」

「リズ。私の名前はリズって言うの」

「そっかあヨロシクなリズリズ!」
 
 リズリ……?

「そういえば僕名前を聞き忘れていたよ。素敵な名前だね」

「ありがとう」

「……普通だな」

「……」