複雑・ファジー小説
- Re: モンスターの国のアリス〜異世界トリップファンタジー〜 ( No.26 )
- 日時: 2011/09/05 22:35
- 名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
こうして私は狼男を見つけることができた。
「次はフランケンシュタインね。え〜とフランケンシュタインは……。どこにいるんだっけ」
私もしかして記憶力ないのかな。あんなに覚えていたのに。
「オイラ、フランケンシュタイン知ってるぞ」
「じゃあ案内してくれる?」
「ただ……。アイツは……」
狼男が俯く。
「なんでもない。じゃあソイツの家行くか」
狼男は顔をあげていつも通り笑った。
森を進む。
「この辺に……あったあった」
「穴?」
大きな洞窟があった。
「ついてこい」
「ひどいな……この臭い」
ミイラ男がつぶやく。
洞窟の中は吐いてしまいそうなくらいすごい悪臭がただよっていた。
鼻をつまみながら言う。
「こんな臭いところにフランケンシュタインは……」
- Re: モンスターの国のアリス〜異世界トリップファンタジー〜 ( No.27 )
- 日時: 2011/09/05 22:36
- 名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
奥に進むと扉があった。
「ほら行けリズリズ」
狼男が小さな声で言う。私はそれにうなずいて扉に向かって言う。
「フランケンシュタイン? いる?」
「誰……?」
小さい返事が返ってきた。
「私はリズ。あなたとお話したいの」
「……いいよ。その代わり、1人で来て。……他のモンスター達は外に出て行ってもらって」
なぜ仲間がいると分かったのか。
「うん。分かったわ」
「大丈夫? 1人で」
吸血鬼が心配そうに言う。
「きっと大丈夫」
「じゃあ僕らは外で待っているよ。行こうミイラ男、狼男」
皆がいなくなってから扉を開けた。
「あなたがフランケンシュタイン?」
研究室のような暗い部屋には、ダボダボのサイズが合っていないパジャマを着た少年の姿。
少年が振り返る。
「ボクはフランケンシュタインじゃないよ…。人間のお姉さん……」
- Re: モンスターの国のアリス〜異世界トリップファンタジー〜 ( No.28 )
- 日時: 2011/09/05 22:40
- 名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
「じゃああなたは誰なの?」
「お姉さんだって誰なの……? そっか、またボクを虐める悪い奴なんだ……」
少年は泣き始めた。な、なんで?
「なぜあなたを虐めないといけないの?」
「ボクみたいに醜い、名前のない怪物なんて消えちゃえって思うんでしょ……?」
少年の身体には痛々しい縫い目がある。
それに、名前のない怪物ってフランケンシュタインのことじゃない。
「私はあなたを虐めたりしない。むしろ、あなたに仲間になってほしいの」
「な、かま……?」
フランケンシュタインは涙をとめた。
「そう仲間」
「ボクの友達になってくれるの……? 嬉しいなあ……!」
ガチャッ
鍵が閉まる音がした。
「えっ……何……」
「えっ、何ってお姉さん友達になってくれくれるんでしょ……? ずっとボクとここでいてくれるんでしょ……?」
フランケンシュタインが私の腕を、骨が折れてしまいそうなくらい強い力で握る。
「痛……ッ」
「ボクねぇ、ずっと待ってたんだ……。ボクと友達になって、遊んでくれる人……」
よく見ると、彼のまわりには壊れた玩具がたくさん落ちていた。首のとれたぬいぐるみ。ピースが足りないパズル。もう動かないロボット……。
- Re: モンスターの国のアリス〜異世界トリップファンタジー〜 ( No.29 )
- 日時: 2011/09/06 20:30
- 名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
ああ、きっと彼と遊ぶといつかこうなってしまうのだろう。
「何して遊ぶ……? あはははっ」
「ねえ…。あなたのお父さんとお母さんは……?」
彼を作った人物、フランケンシュタインはいないのか。
「お父さんはね、ボクがこんな姿だから逃げちゃった……」
フランケンシュタインは笑顔で積み木を積んでいる。
——両親がいない——
それはとても悲しいこと。それなのにこの少年はなぜ笑っていられるの?
……なんだ。私も彼と一緒じゃないか。
笑っていなければいけないんだ。
笑っていなければ、笑えなくなってしまうから。
「外に出ようよ」
「どうして……? 皆ボクを虐めるのに……?」
「外に出れば、本当の友達が見つかるよ」
「お姉さんはボクの友達でしょ……?」
「うん」
「それじゃあ……」
「でも、今のあなたとは友達にはなれない」
私みたいに、弱いあなたとは。
「な……んで……」
積み木が崩れた。
「なんでなんでなんでどうしてどうしてどうして……!」
「ぐっ……!」
フランケンシュタインは気が狂ったかのように叫びながら私の首を絞める。
- Re: モンスターの国のアリス〜異世界トリップファンタジー〜 ( No.30 )
- 日時: 2011/09/06 20:31
- 名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
「やめなさい!」
ドンッ!
フランケンシュタインが何者かに突き飛ばされる。見えない人物に……!
「大丈夫ですか、リズさん」
「ごほっごほっ……。透明人間……?」
何で居場所が分かったのか聞きたいけど、今はそんな余裕はない。
「何……。ボクの友達をとらないでよ……!」
「フランケンシュタイン。あなたは本当に馬鹿です」
「君もボクを虐めるの……」
「虐める……? 被害妄想も程々にしなさい。そんな性格だからいつまで経っても友達が出来ないんです」
「……!? お前に何が分かる……」
「皆あなたと友達になりたいのに、そんなウジウジしているから虐められるんです。容姿のせいではありません」
今の透明人間は真剣だ。あのときの透明人間と違う。
「今のあなたはとても弱い存在です。ですが、きっとあなたにも強い心があるはずです。あなたはその強い心をいつまでも籠の中に閉じ込めるつもりですか?」
「……ボッ……ボクはッ……うわああああ!」
フランケンシュタインは泣いた。
「寂しかったんだよね。分かるよ、私も同じだから」
フランケンシュタインの頭を撫でてあげる。
「うっ……ひっく……。ボク、外の世界を見たい。ボクも連れて行って……」
私はフランケンシュタインの手を握る。
「これで私たち、本当の友達だよ」
- Re: モンスターの国のアリス〜異世界トリップファンタジー〜 ( No.31 )
- 日時: 2011/09/06 20:32
- 名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
フランケンシュタインを連れて外に出る。皆外で待っていてくれた。
「……遅かったな」
「えへへ、ちょっとね」
「ミイラ男ってば『放っておけない、見に行く!』って、ずっと言ってたんだよ」
吸血鬼が笑いながらそう言うとミイラ男の顔が赤くなった。
「お帰りリズリズ! ……フランケンシュタイン!」
「あ……。狼男……」
「あはは、何百年ぶりだっけ?」
気まずそうな雰囲気が漂った。
「オマエの部屋から聞こえてきたんだけどさ、オマエ、オイラのこと友達だと思ってなかったのかよ? ガッカリだな〜」
狼男はからかうように言う。
「あ〜……。う〜〜〜……」
「まあ、オマエがオイラのこと友達だと思っていなくてもオイラ、オマエのことずっと友達だと思っているからな!」
「! うん……!」
美しい友情。
「お前1人で大丈夫だったのか?」
ミイラ男がこちらをちらっと見てから言う。しかもまだ顔が赤いし。
「途中で透明人間が助けに来てくれたの。ねっ、透明人……」
さっきまで一緒だった透明人間がいなかった。まだお礼も言っていないのに。