複雑・ファジー小説

Re: モンスターの国のアリス〜絵募集中〜 ( No.44 )
日時: 2011/09/06 21:30
名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

 私は家の中に入るためにノックをしようとした。
この国に来てから扉ばかり開けている気がする。
 そのとき——。

「コンニチハー☆ お客さんデスカ?」

 向こうから扉を開けてくれた。

「こんにちは。あなたが帽子ガイコツさんですか……うわあ!」

 私は腰が抜けてしまった。なぜかというと彼の容姿だ。帽子ガイコツさんはその名の通り帽子を被っている骸骨だった。骨だけなのだ。

「すみませんねえ。驚かしてしまいました人間のお嬢さん」

「いえ、こちらこそすみません。失礼な事を……」

「叔父さんゴメン。ちょっと叔父さんに聞きたい事があって」

 帽子ガイコツさんはミイラ男の叔父さんらしい。

(ミイラ男。あの人間のお嬢さん、ガールフレンド〜?)

「ち、ちげぇよ! そんなんじゃ」

(照れてる照れてる。ヒュ〜〜〜!)

 帽子ガイコツさん、聞こえてますよ。

Re: モンスターの国のアリス〜絵募集中〜 ( No.45 )
日時: 2011/09/06 21:33
名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

「本当にそんなんじゃねえから!」

 ミイラ男の赤面での全力否定。

「本当にただの仲間です。私たち。ねっミイラ男?」

「……そうだよ」

 帽子ガイコツさんは紅茶をご馳走してくれた。

「で、聞きたい事って何だい?」

「私たち、願を叶える宝物を探しているんですけど……。どこにあるのかが分からなくて」

「願いを叶える宝物ねぇ……。ワタクシは君たちより何百年も生きているけれど聞いた事がない」

 やっぱり……。願いを叶える宝物なんてあるのかな。

「お嬢さん何だかお疲れのようだね。この家で少し休んでいくといい」

 えっ。私疲れているような顔していたかな。

「あと、人間のお嬢さんのお話なども聞かせてほしいな」

 帽子ガイコツさんは笑顔で私に接してくれた。

「じゃあ、自己紹介しますね。私の名前はリズ。好きなものはオカルト」

「こいつのオカルトグッズという武器はすごいからな」

「僕の使用人も被害にあったし」

「う、うるさい! だからあれは正当防衛よ!」

「でもフランケンシュタインには負けそうになったんだよなぁ。リズリズも」

 狼男はフランケンシュタインに視線をやる。

「そのことは言わないでよ……。ボク、反省してるんだよ……。何でリズちゃんにあんなことしちゃったのかなって……」

 フランケンシュタインは今にも泣き出しそうだ。話題を変えなくては。

「それと本を読む事が好き」

 この世界の事を知れたのも本のおかげだ。

「奇遇ですなあ。ワタクシも本が好きなんです。どんな本をお読みで?」

「『不思議の国のアリス』っていう物語です。私不思議の国に行くのが夢だったんですけど、なんか違う感じで叶っちゃいました」

「『不思議の国のアリス』ですか。ワタクシも読んでみたいものです」

 ガタッ
 私は椅子から立ち上がった。

「うわあすごい! この部屋本がたくさんありますね!」

 あ。私ったらお話の途中に。

「すみません。興奮しちゃって」

「ははは。読んでも構いませんよ」

「いいんですか?」

「お嬢さんのような人に読まれると本も喜ぶでしょう」

Re: モンスターの国のアリス〜絵募集中〜 ( No.46 )
日時: 2011/09/06 21:35
名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

 私は本棚の本を汚さないように手にとった。

(読んだ事のない本がいっぱい!)

 その時だった。
 ズキッ——。突然頭が痛み始めた。

【ここは本がいっぱいあるのね】

【本が好きなのかい】

【大好きよ。】

【なら好きなときにここを使ってもいいよ】

【いいの!?】
  
【君は特別だよ】

【ありがとう……!】

 なんだったのだろう。今のは。最後の言葉は名前なんだろうけど聞こえなかった。あの夢と何か関係があるのだろうか。
 だけどあの夢とは少し違う。今のは楽しい、嬉しい……。そして愛しいという気持ちが溢れていた。

Re: モンスターの国のアリス〜絵募集中〜 ( No.47 )
日時: 2011/09/06 21:29
名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

「大丈夫?」

気がつくと私はベッドの上にいた。

「吸血鬼……? 私どうしてベッドの上に……」

「あの後倒れたんだよ。そしてミイラ男がここまで運んでくれたんだ」

「ミイラ男が……?」

「姫……。リズは僕たちに隠し事をしてない?」

 している。だけどこの事は言いたくない。皆に心配をかけたくない。

「してないよ。さっきのはただ、立ちくらみしちゃっただけ」

 私は笑いながら言った。

「そう……」

 そう言って吸血鬼はどこかへ行ってしまった。正直ほっとした。今は1人になりたいから。

「この夢はいつか覚めちゃうのかな」

 天井を見ながら言う。私が見た夢はもしかしてもうすぐ夢から覚めるという警告なのだろうか。覚めたくない。帰りたくない。あんな生活には戻りたくないもの。独りぼっちは嫌。

Re: モンスターの国のアリス〜絵募集中〜 ( No.48 )
日時: 2011/09/06 21:27
名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=11029

「リズさん」

 声が聞こえた。

「透明人間……あなた今までどこに言ってたのよ……」

「ははは……ところでリズさん、一緒に星を見に行きませんか?」

「何で星……」

 まあ気晴らしくらいにはなるだろうと思い、外に出る。
 皆に言っておいたほうがいいのかな。でも皆がどこにいるのか分からないし。
 私は空を見た。でも、

「何よ。星なんて出ていないじゃない」

 星1つない暗い空だった。

「今から見えますよ」

「?」

 空に大きな光の塊が集まった。星の塊だ。それが分裂し、一気に流れた。

「綺麗……」

 こんなに綺麗な物を見た事が無かった。

「この時期になると必ずここで流星群が見られるんです」

「あっ」

「どうかしましたか?」

 見えた! 今絶対見えた!

「今透明人間の姿が見えたの!」

 ほんの一瞬だけ星の光に照らされて。

「え……。本当ですか?」

「本当よ。でも今はもう見えない……でもこの空を見ていると全てがどうでもよくなるなあ」

「あっ。リズさんやっと笑いましたね」

 本当だ。今久しぶりにちゃんと笑えた気がする。透明人間に相談してみようかな。

「この夢っていつか覚めちゃうのかな」

「元の世界に帰りたくないんですか?」

「言ったでしょう? 現実なんて楽しくないって……。夢の世界なら自分の思い通りに動ける。だけど現実ではいくら頑張っても無駄だもの。現実は変えれない」

 私は今までどれだけ努力してきたことか。

「いいえ。変える事は出来ますよ」

「どうやって?」

「どうやってかは……分かりませんが」

 がくっ。

この人は頼りになるような、ならないような……。

「でも、自分を信じていれば、いつか叶います。……たぶん」

Re: モンスターの国のアリス〜絵募集中〜 ( No.49 )
日時: 2011/09/06 21:25
名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

「おーい!」

 狼男がこちらに向かって走ってきた。

「リズリズどこ行ってんだよ〜。せっかくサプライズパーティーをしよ……」

 サプライズパーティー?

「……分かったもういいお前はあっちいけ」

 ミイラ男が狼男の口に包帯を詰めて突き飛ばした。

「……お」

 お?

「お前……元気なさそうだったから……その」

「?」

「……ッ。とりあえず家の中に入れ」

 ミイラ男におされて家の中に入る。パーンとクラッカーがなった。

「ようこそリズさん『モンスター☆パーティー』へ! 企画は吸血鬼君&ミイラ男、料理はフランケンシュタインくん(味見は狼男)、司会はワタクシ帽子ガイコツでーす!」

 いつもよりテンションがおかしい帽子ガイコツさん。

「姫、元気がなさそうだったから。隠し事してないか聞いておいて隠しててごめんね」

 吸血鬼が謝る。

「そんな……。私のためにここまで……」

「遠慮はいらないよリズさん。今夜はこのパーティーを楽しんでくれたまえ。なんたって君のためのパーティーなんだから」

 私は嫌な事が吹き飛んでしまいそうなくらい楽しんだ。

「あの大きなケーキ、フランケンシュタインが作ったの!?」

「うん……。どんなケーキがいいだろうと思ってたらああなっちゃった……」

「ケーキ入刀! ケーキ入刀!」

 帽子ガイコツさんがミイラ男をからかっている。いや、あれは本気なのか?

Re: モンスターの国のアリス〜絵募集中〜 ( No.50 )
日時: 2011/09/06 21:24
名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

「姫、僕と踊っていただけませんか」

 私の手をとったのは吸血鬼。

「でも私躍ったことないし……」

「大丈夫」

 そういう経験が多そうな吸血鬼はダンスが上手かった。自然に身体がついていった。
 そして決心した。私、もう隠し事はやめよう。皆に言わなきゃ。

「そういえば狼男は……」

 まだ外にいるのか。

「んーん! んんんんんんんんんー!(おーい! 誰か助けてくれー!)」

「大丈夫ですか? 今とってあげます。噛みつかないでくださいね」

「ごほっごほっ! あんた、パーティーに行かないのか?」

「ええ、用事がありますので」

「ふーん。まあ助けてくれてありがとな!」

 いつもより長い夜でした。

Re: モンスターの国のアリス〜絵募集中〜 ( No.51 )
日時: 2011/09/06 21:23
名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

 それは突然起こった出来事。

「昨日ちょっと食べ過ぎちゃったかな〜」

 沢山のご馳走に大きなケーキ、お酒はまだ飲めないからジュース。ケーキも食べたのにデザート気分でクッキーやチョコレートも食べちゃったしなあ。
 いけない、いけない。こんなこと考えてる場合じゃない。ちゃんと皆に本当のこと言わなきゃ。

「あの〜実は……」

「さっきからオレ達の後をついてきているのは誰だ?」

 え!?
 私は後ろを振り返った。しかし誰もいない。

「誰もいないじゃない」

「いや、いる」

 もう一度振り向くと確かにいた。一頭の馬?

「ペガサス?」

「よく見ろ娘。我はペガサスではない。一角獣、ユニコーンだ。ペガサスなどと同じに扱うでない」

「あっ、本当だ。角が生えてる」

あと翼が無い。

「お前の目的は何だ?」

「近寄るな小僧供。我は純粋無垢な乙女しか好かん!」

 いきなり出てきて何なんだこの馬は。

「娘、我はそなたに一目惚れをした。我と結婚しよう」

「はあ!?」

 何で私プロポーズされちゃってんの!?

「ユニコーン殿、あなたに姫をお渡しする事は出来ません」

 吸血鬼は私をかばってくれた。

「だから野郎は近づくなと言っておるだろうが!」

 ユニコーンは大きな鳴き声をあげると、その一本の角で吸血鬼に突進した。

「う……ッ!!!」

 心臓は免れたようだがその角が吸血鬼に突き刺さる。

「吸血鬼!!!」

「さあ娘よ我とあの塔で式を挙げよう」

 私はユニコーンに捕まってしまった。

「高い高い! 高い所は苦手! 降ろしてよ!」

「大丈夫だ我が妻よ。すぐ慣れる」

 いつの間にかもう妻呼ばわり!?

「さあ着いたぞ」

 すごく高い塔だった。出口は見当たらない。 

Re: モンスターの国のアリス〜絵募集中〜 ( No.52 )
日時: 2011/09/06 21:21
名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

「そなたは一生ここで暮らすのだ」

 こんな狭くて高い所で一生暮らすなんて冗談じゃないわ!

(そうだ)

 良いことを思いついた。

「ユニコーンって”純粋無垢な乙女”が好きなんですよねぇ?」

「ああ、そうだ。そなたこそ、その乙女だ」

「じゃあ私のお話に付き合ってくれませんか?」

「ああ良いとも」

 私の必殺技。それは長時間に渡るオカルトトーク!

「……がこういう魔術で……」

 一時間経過。

「降霊術は……」

 二時間経過。

「血と……拷問が……」

 三時間経過。

「宇宙人はいつか……」

 四時間経過。
 聞いているユニコーンの顔は真っ青で魂が抜けているようだった。

「と、とても純粋無垢な乙女とは思えん……」

 その言葉を待っていた。

「だから私は——」

 あれ? 足場が……ない?

「きゃああああああ!」

 私ってよく落ちるなぁ。でも、もうこれで落ちるのは終わりかな。さよなら皆。
 目を開けると私はある動物……伝説の生物ペガサスに乗っていた。

「大丈夫だったか? 危ないところだったな」

「助けてくれたんですか。ありがとうございます」

「ユニコーンには我から注意をしておく。そなたは早く仲間の元へと向かえ」

Re: モンスターの国のアリス〜絵募集中〜 ( No.53 )
日時: 2011/09/06 21:19
名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

「吸血鬼! ケガは……」

「ああ大丈夫。吸血鬼族は治癒力が高いから」

 吸血鬼が平気なのはびっくりしたがさらに驚く事があった。

「吸血鬼……。もう自分で歩ける……?」

 吸血鬼より身体が小さいフランケンシュタインが吸血鬼を負ぶっているのだ。

「フランケンシュタイン……。平気なの?」

「え……? 何が……?」

 どうやらこの子はかなりの怪力のようだ。

「リズちゃんこそ……。大丈夫……?」

「ペガサスが助けてくれたし得意技でやっつけてきたから大丈夫! 特殊攻撃魔法・オカルトトーク!」

「……そうだったこいつは」

 ミイラ男が何かぼそぼそ言っている。

「まず私に結婚を申し込むなんて100兆年早いのよ。とんだ邪魔者が入ったわ。私は皆に言わなくちゃいけないことがあるのに」

「?」

「今まで隠しててごめんなさい。私最近、変な夢を見るの」

 私は今まで見てきた夢の事を皆に話した。夢は今日も見た。あの助けを呼ぶ人物の姿もうっすらと見えた。
 あれはきっと、未来の私だ。

Re: モンスターの国のアリス〜絵募集中〜 ( No.54 )
日時: 2011/09/06 21:17
名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

 あの夢のお告げ。きっと私が誰かに……。殺されてしまうんだ。

「何でそんな大事なこと、オイラ達に黙ってたんだ?」

≪もし嘘ついてたらオイラ、アンタを喰い殺すかもしれねえけどな≫

「もういいよ。別に喰い殺してくれても……」

「喰い殺したりしねえよ! リズリズは大切な仲間なんだから!」

 狼男は涙声で大きく言った。

「もう1人で悩むな、辛い事は隠すな!」

「リズちゃんが悲しいときはボクが頭を撫でてあげる……」 

「誰にも殺させないよ。僕達がきっと守ってみせる」

「……当然のことだ」

 私はなんて幸せなのだろう。こんなに優しい仲間達がいて。
 たとえこの言葉が物語を繋ぐ”台詞”であったとしても。

Re: モンスターの国のアリス〜絵募集中〜 ( No.55 )
日時: 2011/09/06 21:16
名前: 七瀬 ◆50da5jMTv2 (ID: ADlKld9P)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=11029

 今のところ宝の場所を知っている人は誰もいない。

「こうなったら、これから出会う人たちに聞いて行くしかないわ」

「そうだな……それが一番かもしれない」

 森を進んで行く。この国って森ばかりだな。同じ景色は嫌い。

「あっ」

 向こうに海が見える。

「海だわ! やっと森を抜けられるのね!」

 そのとき、不思議な声が耳に入った。

《私の歌で眠りなさい。記憶何もかも忘れて》

 美しい歌声だ。

《涙の海に溺れなさい。海の藻屑となって》

 でも何だろう。この歌は聴いちゃいけない。

「ねえ皆。早くここを通り過ぎましょ……!?」

 皆虚ろな目をして海の中に入って行った。
 私は耳を塞ぎながら言った。

「この歌を聞いてはいけない! 皆、目を覚ましなさいよ!」