複雑・ファジー小説

命短し、闘れよ乙女!! ( No.133 )
日時: 2012/03/12 23:04
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: pvHn5xI8)
参照: コメントは後で返します(;´Д`)

「んー……」

和がご飯を食べる手を止め、考え始める。

「分かりません」

しかし、直後、無駄に凛々しい表情でそう言われた。
あぁ、俺より後ろは何も知らされてないのか……。

俺だって事情は知っているけど、誰かから知らされたわけではないし、きっと知らないのが当たり前なんだよね……。

「きっと、最初から知らない方が良いことなんですよ。 最初から答えを知ってたら怠惰な人は努力をしませんし、努力家な人は退屈しちゃいますよ。 だから、神様は意地悪してる訳ではなくても答えを教えてくれないんですよ」

和が初期状態の半分以下に減ったスクランブルエッグを口に入れたままそう言う。

神様…………ねぇ。
和はそんなものがいると思っているのか、あるいは研究者共をそう思っているのか。

「さっきから潮さん、元気無いですね……。」

思わず溜め息をついてしまった俺をみて、和がそう言った。
そもそも、記憶がある範囲で俺が元気だったことなんてあっただろうか。

「…………何してるの」
「潮さんに元気になってもらいたくて……」

そう主張する和だが、スクランブルエッグが乗せられたスプーンを俺の頬に押し付けて元気になるとでも思っているのだろうか……?

「はい、あーん!」
「あぁ、勘違いして覚えちゃったのね」

キラキラと目を輝かせながら和が俺の頬にスプーンをめり込ませる。
別に致命的に痛いわけでは無いが、地味に痛い上に衛生的にはよろしくない。
というか、近戦格闘タイプの和の力で押し続けたら、スプーンがお陀仏する。

「和、落ち着いて聞くんだ。 和は色々と勘違いして覚えてるよ」

彼女の今後を考えて、訂正をすべく声を出す。
話を聞いてくれる気はあるらしく、スプーンという凶器兼一番の被害者を手元に戻す。

そのまま乗っているスクランブルエッグを食べようとしたから、止めておく。

「どうしてですか?」

和が何一つ理解出来ていない様子の表情を浮かべる。
この子についていた研究員の適当さが伺える。

研究熱心なやつにあたらなくてラッキーだった、とも言えるけど。

「あのね、まず、そういうのは青年にやってあげて」
「好いてる人同士でやる、っていうことですか? そしたら、潮さんにも……」
「ううん、青年だけにしてあげて」

本当は青年と和がいい雰囲気になるのは嫌だ。
でも、青年が嬉しそうにしてるのを見守りたいという気持ちもある。

矛盾しているのは重々承知だけど、このダブルバインドはどうしたらいいんだろうね?

「分かりました! じゃあ、廃墟に行きましょう!」

…………一体、彼女は何が分かったのだろうか。