複雑・ファジー小説
- 命短し、闘れよ乙女!! ( No.151 )
- 日時: 2012/04/03 22:02
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: pvHn5xI8)
- 参照: 和「゜(゜´Д`゜)゜ブワッ」な回。
「お兄ちゃん、なんであたしの分だけ用意されてないの?」
お茶を淹れたりだとか食器を出すくらいなら手伝ってやろうと思い、晩ご飯の少し前の時間にリビングへ上がると、既に三人がご飯を食べていた。
……うん、何度テーブルの上を見ても3人分しか並んでいない。
見覚えのあるお兄ちゃんのお椀はあるし、お気に入りである和ちゃんの分が無いはずはない。
それに病み上がりの潮さんの分も無いはず無い。
というか、三人とも既にご飯を食べている。
つまるところ、あたしの分が無い。
セルフサービスっていうわけでも無さそうだし……。
「あ?」
お兄ちゃんがあからさまに不機嫌そうな表情をこちらに向ける。
間違いない、まだお昼のことを気にしてる。
そっか……。
あたしが気にしてないからといって、相手も気にしてないわけじゃないんだよね……。
「ユリアさん」
和ちゃんに服の裾を引っ張られた。
いちいち言動が可愛いぞ、このやろう!!
それはさておき、和ちゃんの手元を見ると、晩ご飯のメインだと思われる唐揚げが4つほど載ったお皿があった。
「食べてください!!」
そう言って、お皿ごとあたしに押し付ける。
しかし、そんな和ちゃんの優しさが詰まったお皿をお兄ちゃんが即刻取り上げた。
めちゃくちゃ可愛い女の子とこの世のものとは思えないほどカッコいい男の人に告白されたからって、ちょっと調子に乗ってない?
別にお兄ちゃんの時代が来たわけじゃないのにねぇ……。
「夢幻さん、それはユリアさんの分ですよ! 食い意地張っちゃダメです!」
お兄ちゃんが取り返したお皿を再度和ちゃんが奪い取る。
理由からみて少しばかり勘違いしているらしい。
「そうじゃなくて、ユリアが悪いことをしたからご飯を抜いてるの!」
お兄ちゃんが和ちゃんに対してまでも少しばかりキツい口調を使い始めた。
しかし、和ちゃんはお兄ちゃんがメンタル的にも身体的にも弱いことを見抜いてか、全くひるまない。
「だって、ちゃんと考えたら2人が喧嘩してるのって、私のせいじゃないですか! 私がユリアさんから聞いた時点で辞書をひけば良かったんです……」
そこまで言って、和ちゃんのさっきまでの凛々しい表情が崩れ、泣き始めた。
お兄ちゃんに対してはそれ程悪いことをしたとは思わないが、和ちゃんの泣き顔を見てるとムラムラする。
間違えた、罪悪感がわいてくる。
「悪いのは和やユリア嬢かもしれないけど、泣かせたのは確実に青年だね」
潮さんがわんわん泣いている和ちゃんの背中をさすりながら、お兄ちゃんに向けて言った。
潮さんはお兄ちゃんの肩を持つと思っていたから、少し驚いた。
バツが悪くなったからか、お兄ちゃんが自分の部屋へと戻る。
お兄ちゃんが使っていたお皿を見ると、いつの間にやら完食され、空になっていた。
本当、ちゃっかりしてるなぁ。