複雑・ファジー小説
- 命短し、闘れよ乙女!! ( No.164 )
- 日時: 2012/04/11 21:00
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: pvHn5xI8)
- 参照: 潮「何このキャラの濃いモブ気味の子……壁|ω・`)」な回。
「夢幻さん……」
閉められたら扉に向かって、和が切なげに呟く。
正しくは扉の向こうにいる青年に向けての言葉なのだが。
「んー、こういうケンカした時ってさ」
青年が見ていないのをいいことに和から受け取った唐揚げをモグモグと頬張っているユリア嬢が口を開いた。
切り出し方からして、もう嫌な予感しかしない。
「倍返しが基本だと思うの」
案の定、青年の死亡フラグがユリア嬢によって立てられる。
小さい頃からだいたいこんな感じだったのだろうが、やっぱり愛する青年が怯えながら泣いている姿は————どうしよう、すごい見てみたい。
やっぱり俺、好きな子ほどいじめたくなっちゃうタイプなのかぁ。
「む、夢幻さんをいじめちゃダメですよ!」
和がアワアワと慌てた様子でそう主張した。
……あぁ、ユリア嬢に怯えてるのね。
「じゃあ、お兄ちゃんがあたしをいじめるのはいいの?」
ユリア嬢が和に教育番組のお姉さんを思わせる表情と口調で問いかける。
和の頭が弱いのを利用して、丸め込もうとしているようにしか見えないんだけど……。
「よくないです!」
何故だか、和が授業中に発言するときのように手を挙げて断言する。
「だよね! じゃあ、いじめられたらどうすればいい?」
「反撃します!」
ユリアの質問に和が即答する。
和は能力がら体を動かすのが好きそうだけど、脳みそまで体育会系みたいだね…………。
「……ユリア嬢、ちょっと出かけてきてもいい?」
青年の泣き顔がおさめられないのは残念だけど、俺にもやらなくてはいけないことは沢山ある。
「晩ご飯までに帰ってきてね」
ユリア嬢によって、許可が降りたため、今から酷い目に合わされるであろう青年を見殺しにして出掛けることにした。
でも、青年の泣き顔を思うと後ろ髪を引かれるような気持ちがある。
あっ、そうだ。
「青年が泣いたり痴態を晒したら、写メ送って」
「分かった! ちゃんと送るよ!」
俺の言葉にユリア嬢が生き生きと返事をしてくれた。
楽しそうで何よりだ。
****
すぐにいつものスーツに着替え、外へ出る。
ジャージのままでもそんなに問題ないが、初圖が俺が青年にいじめられてるって勘違いをしたら大変だしね……。
青年が住んでいるマンションはオートロックだが、中から出る分には認証などはない。
帰って来た後はユリア嬢に連絡して、開けてもらえばいいし。
ユリア嬢からしつこく連絡先を聞かれたから、嫌々携帯の番号を教えたのだが、こんなに役に立つとは。
「あっ、早速発見しちゃった☆」
妙に弾んだ調子の女の子の声が響く。
音源の方向からして、俺の横の木の上にでも身を潜めているのだろう。
「とうっ☆」
どうやら、本当に俺の目の前の木にいたようで、特撮のヒーローのように無駄に回転しながら飛び降り、キレイに着地した。
これがただの人であれば、「お巡りさん、こっちです」で話は片付くのだが、どう見たって彼女は状況が違う。
————彼女は『ブルジェオン』だ。