複雑・ファジー小説
- 命短し、闘れよ乙女!! ( No.177 )
- 日時: 2012/05/04 21:38
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: 7tezM94T)
- 参照: くくり「解せぬ(´・ω・`)」な回。
「おかえりー!!」
そして、ここ2日で3回目の鳩尾を目掛けたタックルをかましてきた。
ユリア嬢やくくりは力が弱いから平気だったが、初図相手の場合は話が変わってくる。
体重は比較的軽いんだけど、やっぱり力の方がね……。
「むいっ!?(えっ!?)」
腕を限界まで前に突き出して、くくりを盾にする。
くくりは俺の手の中で短い手足を必死に動かしてじたばたしているが、防御力が高いくくりならきっと大丈夫だ。
「潮ーッ!!」
初図のタックルがくくりに炸裂する。
「むいくぁwせdrftgyふじこlp」という言葉を残して、外へと飛んでいった。
飛んでいったくくりをしばらく見守っていたところ、どうやら巫女服姿の彼女——寧音に拾い上げてもらえたらしい。
「あれ? 潮じゃなかったの?」
くくりをふっ飛ばしておきながら嬉しそうに尻尾を振っている初図がキョトンとした表情で尋ねてきた。
和と初対面の時に、青年と俺の仲を邪魔することになるということは明白な事実だったのに、即座に殺すという判断をしなかったのはこういうキョトンとした表情などが初図に似ているところがあったからかもしれない。
……振霧にも和にも共通するのだが、アホの子すぎて倒す気になれなかったのも原因の一つだ。
「うん。 さっきのは俺が盾にしたくくりだよ」
初図渾身のタックルの威力と勢いはくくりにぶつかった時点でほぼ無くなり、その隙に俺は回避行動を取ることが出来た。
くくりの犠牲は無駄じゃなかったよ……。
「むいーっ!! むきゅるーっ!?(潮しゃまっ!! 何であんな酷いことするのっ!?)」
寧音に救出されたくくりは物凄い怒っていた。
まぁ、怒っているのが当たり前だよね。
「ごめんね。 一緒にお風呂入ってあげるから許して?」
怒りで毛が逆立っているくくりに提案する。
すると、少し嬉しそうな顔をした直後、再び毛を逆立てて怒りの表情に戻る。
「もいっ! むいっもっきゅい!(騙されないぞ! 潮しゃまはボクのことを押し倒そうとしてるんだ!)」
くくりが全力で主張する。
一体、何をどう間違えたら、俺がくくりを押し倒すという事態に陥るんだろうか。
くくりは雄だし、そもそも人間じゃないどころか人型じゃないし。
いきなり飛び出していったくくりを心配してか、パタパタと寧音が駆け寄ってきた。
そして、そのままくくりに耳打ちする。
すると、くくりの顔が一瞬にして真っ赤になる。
「むきゅるっ! もいっ!(間違えた! 潮しゃまはボクのことをまるこめようとしてるんだ!)」
「まだ間違ってるけど……」という言葉を呑み込み、くくりを抱き上げる。
「もいーふ?(反省してる?)」
くくりが上目遣い気味にそう問いかけてきた。
可愛いには可愛いが、可愛いの向いている方向が違う気がする。