複雑・ファジー小説
- 命短し、闘れよ乙女!! ( No.180 )
- 日時: 2012/05/19 06:38
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: F4bOQQzb)
- 参照: 今回出てきたキャラは三角関係要いn(ry
「夢幻さん! 私、欲しいものがあるんですっ!」
俺が拗ねて部屋に立てこもっていたところ、突然、何かを思い出したかのように和ちゃんが突撃してきた。
突撃してきたのがユリアじゃなかったのはせめてもの救いだが……。
「ん……何?」
昨日、布団の中に潜っていた結果、ウトウトとして眠ってしまっていたらしい。
そのため、喉が乾いていて、小さく掠れた声しか出なかった。
布団から顔を出すと、目に痛い蛍光灯のまぶしい光が部屋を照らしている。
自然光があんまり入ってきていないことから、恐らく午前5時頃なのだろう。
昨日もそうだったけど、和ちゃんは早寝早起きを徹底して行っているらしい。
「欲しいものがあるんです!」
和ちゃんが目を輝かせて、もう一度、主張してきた。
「……おやすみ」
よし、寝オチして聞かなかったことにしよう。
こんな可愛い子が俺みたいな奴のところに寄ってくるなんておかしい、と薄々思っていたのだが、金目当てだったのか……。
「ダメです! 起きてくださっ……!?」
俺が頭から被っていた布団を引っ剥がした和ちゃんの表情が驚愕で固まる。
まさかとは思うが、黒くて油光しているやつがいたとか……!?
でも、そいつが出現したところで、和ちゃんならボコボコにしちゃいそうだけど……。
「……夢幻さん、どうして私じゃなくて……?」
和ちゃんが今にも泣き出しそうな表情で、俺に対して問いかける。
そして、何故か泣きそうな表情のままで和ちゃんがいつも着ているセーラー服のような服から携帯を取り出し、写真を撮る。
チロリーン、という安っぽいシャッター音がなったのを確認してから、満足気に元あった位置にしまう。
さっきまでは布団の中でぬくぬくしていたから気付かなかったが、確かに自分の横に生暖かい感覚がある。
その方向に手を伸ばしてみる。
「…………」
この感触は気のせいだと信じたい。
だって、これは……!
意を決して、生暖かい感触があった方を向く。
「……潮だと思った? ……残念、俺でしたー」
寝癖がついているピンクがかった茶髪と目の下に出来た隈が特徴的な青年がドヤ顔を浮かべ、小馬鹿にしたような態度で言い放った。
体格は潮さんに近いが、そもそも顔も声も彼とは違う。
「勝手に出てきちゃダメじゃないですか」
和ちゃんが俺の布団に入っていた見知らぬ青年の額にデコピンをかます。
デコピンをした瞬間に和ちゃんの指から摩擦が原因と思わしき火花が散ってたけど、大丈夫なのだろうか。
「……痛い」
「痛いで済むの!?」
額がパックリ割れているし、どう見たって重傷だ。
外から見ただけでは大量に出血しているということしか分からないが、下手したら頭蓋骨も割れているのではなかろうか。
「……大丈夫」
グッと親指を立てこちらに大丈夫とアピールをするが、そのまま後ろへ倒れこむ。
……全然大丈夫じゃなさそうだ。