複雑・ファジー小説
- 命短し、闘れよ乙女!! ( No.184 )
- 日時: 2012/05/26 10:58
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: F4bOQQzb)
- 参照: 夢幻「解せぬ(´・ω・`)」
「だから『勝手に人前に出ちゃダメ』って言ったのに……!」
額がパックリ割れている見知らぬ青年を治癒させ終わった和ちゃんがそう言った。
和ちゃんが彼の額を割った犯人なのだが、ちゃんと治ったし、何故だか彼も納得しているらしいから、これ以上追求しないことにした。
俺はあんな風に額を割られたら、間違いなく即死するだろうし。
「……和、好き」
「私も千宗ちゃんのこと好きですよ」
…………え?
どういうこと……?
「あっ、紹介しますね。 この子は私の『フォイユ』の千宗ちゃんです!」
俺の怪訝な表情に気がついた和ちゃんが、額が割れてしまっている青年を紹介する。
青年は俺の方に手を伸ばす。
どうやら握手を求められているらしい。
相手に合わせて手を差し出すと、千宗さんのゴツゴツした手が俺の手を掴み、そのまま背負い投げされた。
……何、この人。
規格外すぎる……!!
「夢幻さん! 大丈夫ですか!?」
幸いなことに床に背中を打ちつける前に和ちゃんが受け止めてくれたため、俺は無傷で済んだ。
「和ちゃんってば、男前だなぁ……」という感想で済めば良かったのだが、和ちゃんが俺を受け止める為に、千宗さんの顔面とお腹を思いっきり踏みつけていたんだけど……。
「……千宗さんが…………」
確信犯なのかもしれないが、一応、指を指して和ちゃんに千宗さんを踏んでいることを教えてあげる。
「……ふえ?」
不思議そうな表情で和ちゃんが自分の足元を見やる。
すると、やっと現在進行形で踏まれたままの千宗さんが目に入ったらしく……。
「え、あっ、ごめんなさい!」
そして、何故か和ちゃんがじたばたと足踏みをする。
本人はパニックに陥っているだけなのだろうが、千宗さんは繰り返し蹴りをいれられているのと大差ないわけで。
「……ヤバい、産まれる」
千宗さんが苦しそうにそう呟いた。
そりゃ、こんなにお腹を踏まれ続けられたら戻すのは無理もないけど……。
—*—*—*—*—*—
結局、本当に吐きそうだった千宗さんをトイレに置いて、和ちゃんの要望に従って外に出る。
「これです! この機械です!」
そして、和ちゃんが俺が住んでいるマンションの下に設置されている自動販売機を指差す。
「……飲み物が欲しいの? それとも機械のほ……」
「コレが欲しいです!」
和ちゃんが自販機の一番下の段に入っている『アスパラガスの峠』なるチョコレート菓子のボタンを連打する。
「ちょ、和ちゃん!? それ、お金入れないと買えないから!!」
後ろから和ちゃんの腕を掴んで引き止める。
「え?」
……彼女には、一体、どこから説明すればいいのだろうか。