複雑・ファジー小説
- 命短し、闘れよ乙女!! ( No.185 )
- 日時: 2012/06/02 22:05
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: L3t15YTe)
- 参照: ユリア「壁|ω・`)」な回。
「そうだったんですか……。 どうりで出てこないはずですね……」
和ちゃんに自動販売機について説明をしたところ、なんとなく理解してくれたらしい。
安心はしたが、今まで知らなかったことにも問題があると思う。
「でも、現金が必要だなんて……! 何にしろ、買えないシステムになってるんですね……」
和ちゃんがアスパラガスの峠を見つめて、寂しそうに呟いた。
ここの自動販売機はお菓子も数種類だけとはいえ買えるのだ。
和ちゃんは気付いていないようだが、アイスの自販機も横にあるから、夏場は随分とお世話になっている。
しかも、有り難いことに、スーパーよりも価格が安い。
まぁ、安いと言っても5円くらいしか変わらないし、買わないよりも安い買い物は無いんだけどね。
「和ちゃん、一銭もないの?」
アスパラガスの峠を見つめ続けている和ちゃんに聞いてみる。
「いえ、そんなことじゃ『パピヨン』の方々に迷惑をかけてしまいますから、『ブルジェオン』はみんなクレジットカードを持ってるんです」
そう言って、和ちゃんがポケットから銀色のクレジットカードを取り出す。
「限度額無制限」と書いてあるのが凄い気になるが、とりあえず今はスルーしよう。
「あ、あと、これも」
和ちゃんがマネーカードと思わしきカードをこちらに渡してきた。
これにも「限度額無制限」という風に書いてある。
和ちゃん達を造りだしたところは、一体どれだけ良い資金源を持っているのだろう……?
「コンビニとかスーパーはこれで済むんですけど、この機械にはマネーカードもクレジットカードも使えないので……」
和ちゃんがアスパラガスの峠のボタンを連打しながらそう言った。
和ちゃんの力でこんなに押し続けたら壊れるのではなかろうか。
「あれ? 青年、何してるの?」
タイミングを見計らっていたのではないかと思うくらいにキレイなタイミングで潮さんが現れた。
「アスパラガスの峠してます!」
「青年、通訳して」
嬉しそうな和ちゃんの言葉を聞いた瞬間に、潮さんが困ったような表情をこちらに向ける。
「このアスパラガスの峠っていうお菓子を買いたいんですけど、和ちゃんは現金を持ってないから買えないね、っていう話をしてたんです」
潮さんに簡単に事情を説明した。
曰く、現金は奪われたら警察に届け出るまでしか出来ないが、クレジットカードなら奪われた段階で、そのクレジットカードを無効にして、新たなものを発行し直せるから、という理由で『ブルジェオン』にはクレジットカードしか持たせていないらしい。
そう説明してから、潮さんがスーツのポケットから財布を取り出し、それを開ける。
横から覗き見ると、確かにクレジットカードとマネーカードが入っている。
しかし、チラッとだが財布の中から歴史上の偉人が顔を出している。
どう見たって、この諭吉さんは現金の一万円札だ。
「現金は持ってないんじゃ……?」
潮さんに尋ねてみる。
その間にも、和ちゃんはアスパラガスの峠のボタンを押し続けているのだが、これ以上ツッコんだら負けな気がする。