複雑・ファジー小説

命短し、闘れよ乙女!! ( No.193 )
日時: 2012/06/17 20:27
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: L3t15YTe)
参照: 千宗「(・`ω・´)ドヤァ……」

「もうっ、千宗ちゃん、ダメですよ!!」

和ちゃんが更衣室や荷物置きとして時々使っているユリアの部屋から飛び出してきて、俺の足元にしがみついているドヤ顔うさぎの耳を掴んで、引き剥がす。
ドヤ顔うさぎの耳から鳴ってはいけない音が鳴っていたのだが、大丈夫なのだろうか……。

そんな心配をしている俺の足元で燃えつきかけているドヤ顔うさぎの姿が突然霞み出す。
目を疑い、まばたきをした直後、その場には眠そうなジト目と隈が特徴的な青年、千宗さんが転がっていた。

そういえば、さっき和ちゃんがドヤ顔うさぎを引き剥がした時、「千宗ちゃん」って呼んでいた気がする。

「……和、もっと優しくして。 夢幻は死ね」

何、この扱いの差。
俺よりも和ちゃんが優遇されるのは普通のことだが、それにしても酷い。
しかも、いきなり呼び捨てにされてるし。

「そんな酷いことをいうなら、千宗ちゃんとは絶交します!」
「……ごめんね」
「私じゃなくて夢幻さんに謝ってください」

……謝らせる手法が若干うちの母親に似ている。
和ちゃんは幼稚園の先生とかに向いてそうな性格だなぁ……。

「……チッ。 サーセン」

しかし、和ちゃんに促されて謝った千宗さんの態度はあからさまに謝る気がない人のそれだった。
ユリアといい千宗さんといい、俺は『ブルジェオン』に肩入れしている人に嫌われていっているらしい。

「同じ種類でも千宗さんとくくりちゃんは似てないねー。 よしよし、アイスが好きなのー?」
「もいっ」

全く謝る気のない険悪ムードの千宗さんとは対照的に、のほほんとした雰囲気で棒を外して、小皿に出したレモンシャーベットをちょっとずつ食べていく丸っこい水色の生物の可愛さは尋常じゃない。

「レモンシャーベットで思い出したんだけど、潮さんは?」
「お兄ちゃんの部屋にいるよ。 昨日、お兄ちゃんが立てこもっちゃったから、部屋も布団も使えなくて、潮さんはソファで寝てたんだからね?」

何か余計なことを言ったら即座に殴ってきそうなほど、険しい剣幕でユリアが告げてきた。
間違っても、「俺もこの間、それやったから」なんて言える雰囲気ではない。

「……俺、今日は和とデートするんだー」

突飛な千宗さんが和ちゃんに抱きつきながら、そうドヤ顔でそういった。
この人はどんな姿であれ、ドヤ顔が通常状態らしい。

「本当? どこ行くの?」

千宗さんの腕の中に収まっている和ちゃんにユリアが問いかける。
千宗さんが和ちゃんに抱きついているところを見ていると、少し、いや、かなりムッとしてしまう。
和ちゃんのことは可愛いと思ってこそいるが、恋愛感情を抱いたことはないはずなのに。

性的に興奮してたけど、それとこれとはまた別だ。
エロ本を読んだら興奮するというのは普通の反応だろうが、別に紙面の子に恋するなどという事態に陥ったことはない。
それと同じことだろう。