複雑・ファジー小説

Re: 命短し、闘れよ乙女!! -episode of zero- ( No.199 )
日時: 2012/07/07 14:09
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: L3t15YTe)
参照: 和・千宗「くくり、マジイケメン(´∀`*)」

「ノンブル43、時雨。 やる気満々なところ、悪いけど、降参するよ。 逃がしてくれる?」

時雨、と名乗った彼女はさっきの奇襲時とは打って変わって真面目そうな口調と表情でそう乞うてきた。
命乞いをするということは、おそらく『パピヨン』をまだ見つけられていないか、その方と添い遂げたい、と思っているからだろう。

「分かりました。 今度は『パピヨン』の方がいる時に勝負しましょう」
「ありがとう」

私はそんな相手にトドメをさせるほどの精神力を持ち合わせてはいない。
だから、相手を見逃すことにした。

「千宗ちゃん、次、行きますよ」
「……分かった」
「もいるー?(まだ、お家に帰らないの?)」

千宗ちゃんが抱えている潮さんの『フォイユ』が早くもホームシック——というか潮さんが恋しくなってきたらしいのだが、もう少し他の『ブルジェオン』を探そうと思う。

時雨さんに背中を向けて歩き出す。
この辺に他の廃墟っぽい所とか、あるんでしょうか……?

「もゆるーふ!!(嘘は良くないよ!!)」

突然、そう叫んだ潮さんの『フォイユ』が千宗ちゃんの腕の中から私たちの背後へと飛び出した。
振り返ると、時雨さんがあきらかに威力のありそうな巨大な隕石をこちらへと投げ飛ばしてきていた。

千宗ちゃんが結界を張ってくれれば、死にはしないだろうが、それでも怪我は負ってしまうだろう。
その前に、多分、結界は間に合わないだろうし、逃げるにしても間に合わない。
こういう時に限って、頭ばかり回って、身体が動いてくれない。

「……和ッ!!」

千宗ちゃんの夢幻さんよりも少し大きな身体に抱き寄せられる。
きっと『フォイユ』の役割を全うして、私を庇おうとしてくれているのだろう。

でも————

「……ッ!?」

そんな千宗ちゃんのお腹を全力で蹴飛ばし、隕石の攻撃の範囲外へ追い出す。
気絶レベルにダメージを与えたはずなのに、千宗ちゃんがこちらに手を伸ばしてきた。
——もちろん、その手はとらない。

「もゆっ! もっきゅるー(もうっ! 見てられないよ)」

そんな中、さっき自ら飛び出し、宙に舞った潮さんの『フォイユ』がそう言って、隕石の前に立ちはだかる。
ユリアさん風に言えば、この子に「死亡フラグが立った」のではないだろうか。

助けたいのは山々なのだが、距離的に届かない上にそこまで行くと隕石にぶち当たって、私諸とも、潮さんの『フォイユ』も潰されて死んでしまう。

「もいゆるっ!!」

特に意味は無いらしい声と同時に、青白い電気が六芒星をの形をした巨大な結界が出現した。
私から見たらとても大きく感じた隕石は、それよりも巨大な壁に打ち負け、砕け散った。

「もいっふー!!(当たらなければどうということはない!!)」

いつもはしょぼーんとした表情で固定されているのに、キリッとした表情で潮さんの『フォイユ』が時雨さんに言い放った。