複雑・ファジー小説

命短し、闘れよ乙女!! -episode of zero- ( No.203 )
日時: 2012/07/17 19:29
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: L3t15YTe)
参照: くくり「(・`ω・´)ドヤァ……」な回。

「もいゆー!(襲っていいのは、襲われる覚悟がある人だけだよ!)」

短い手をブンブンと振って、潮さんの『フォイユ』が熱弁する。
夢幻さんやユリアさんが、ついついこの子を甘やかしたくなってしまう気持ちが凄く分かる。
状況が許してくれるなら、今すぐ抱きついて頬ずりをしたい。

「もいっふるもゆるっふ!(潮しゃまもあの人もそう言ってたよ!)」

そう言いながら、時雨さんが放ってきた隕石に青白い光を纏わせ、それに頭突きをして彼女の方に跳ね返す。
時雨さんは、『フォイユ』の能力で威力を増した隕石にあっけなく潰された。
悪いことをすると、ばちがあたる、というのは本当らしい。

—*—*—*—*—*—

「もいっふるー!!(潮しゃまー!!)」
「くくり!」

和ちゃんが帰ってきたから玄関の扉を開けると、くくりが潮さん目掛けて飛び込んできた。
「朝いたはずのくくりがいない」と言って、お風呂の栓の中まで調べていた潮さんも嬉しそうにそれを受け止め、床に叩きつける。

…………え、どういうこと?

「なんで勝手にいなくなったの?」
「も、もゆっ……(気付いたら拉致されてて……)」

潮さんがくくりと問答しながら、バスケットボールでやるようなドリブルをするのと同じ手段でくくりを何度も床に叩きつける。
どこからどう見ても、動物虐待以外の何物でもない。

……よし、見なかったことにしよう。

「夢幻さん、私、他の『ブルジェオン』を1人倒しましたよ!」

くくり達から目を逸らすために振り返ってみると、目を輝かせた和ちゃんがそう言って、少し頭を俺の方に近づけてきた。

これは撫でていい、というサインなのだろうか……?
いや、違ったとしても今なら場の流れ的に撫でても許される気がする。
というか、正直、今を逃したらもう一生チャンスが訪れない気がする。

恐る恐る和ちゃんのピンク色の髪をかき乱さないように、軽く撫でてみる。
その瞬間に、和ちゃんの表情がパッと輝き、もっと、と言わんばかりにすり寄ってきた。
和ちゃんは小動物っぽくってやっぱり可愛い。

「……夢幻、死ね」
「お兄ちゃんって美味しいところばっかり持っていくよね」
「潮からも手を引いて欲しいですね」

和ちゃんを撫でている俺に、千宗さんやその他大勢が非難を浴びせる。
よく思い返してみると、千宗さんが俺に投げかけた言葉の大半は罵倒か避難のどちらかしかない。

「もいゆー(寧々しゃまだー)」

くくりがドリブルされながらも、嬉しそうにユリアの隣で湯飲みに淹れた緑茶と思わしき飲み物を飲んでいる、長い黒髪の巫女さんに手を振る。
俺の知り合いに巫女服を着ている人なんていなかったはずなんだけど……。

「はじめまして、『ブルジェオン』ノンブル3の寧々です」