複雑・ファジー小説

命短し、闘れよ乙女!! -episode of zero- ( No.207 )
日時: 2012/07/27 17:14
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: L3t15YTe)
参照: フリーダムユリアな回。

「わんっ、わんわんお……!」
「かわいい! 初図たん、超かわいい!」

……一体、どうしてこうなった。

「うーん……。 まさかついてきてしまうとは思っていませんでしたね……」

少し困惑気味な表情を浮かべる寧々の視線の先には、逃げ回る初図を追いかけ回すユリア嬢の姿があった。
一応、神社の神霊である初図を追いかけ回すようなことをしたら罰があたりそうなものだけど……。

「つかまえたっ!」

ユリア嬢に捕まった初図が彼女の腕から逃れようとじたばたと暴れているが、そんな遠慮がちな抵抗ではユリア嬢は離してくれないだろう。

「もゆっ?(どうするの?)」

縁側に座っている俺の膝の上に乗っかっているくくりが上目遣いに尋ねてきた。

「もちろん、行きますよ」
「そうだね。 今更、やめるのはちょっとね」

寧々に続いて、返事をする。
計画柄、他の『ブルジェオン』には悟られないように動いてきたつもりだが、俺が錯乱している最中に悟られるような言葉を口にしてしまった可能性もある。
和と振霧はアホの子だから、バレてないとは思うけれど……。

「あぁ……。 おへそと鎖骨が出てる上に、ちょっと手を突っ込めば【自主規制】も【自主規制】も触り放題……! ズボンの端から見えるこのラインも完璧……!! この服をデザインした人も、初図たんに着せた人も天才だわ」
「わぅ……」

ユリア嬢に全身余すところなく弄られている初図が恥ずかしそうに顔を真っ赤にして、うつむく。
よくよく見てみると、耳と尻尾が垂れ下がってきているが、満更でもないようだから、しばらく放置しておいても大丈夫だろう。

「こら、うら若き女の子が【自主規制】なんて言っちゃダメですよ」

今、寧々も【自主規制】って言ったよね、という小学生が言うような屁理屈はおいておいて、何が何だか分かっていないくくりの頭を撫でる。
出来れば、このままずっと純粋な子であって欲しい。

「もいっふる、もゆ?(潮しゃま、ちゃんと帰ってくるよね?)」

俺に頭を撫でられているくくりが心配そうにそう尋ねてきた。
くくりは心配性なところがあるが、今回はそれは関係なく、本当にハイリスクだ。

なんと言っても、一度逃げ出した研究所に再び向かわなければならないのが一番の問題だ。
もしかしたら、また捕まって、あんな汚い男達に蹂躙される日々を過ごさなければならなくなるかもしれない。
そんなことを考えるだけで、思わず身体が震える。

「ちょっと着替えてくるね」

震えを抑え、隣に座っている寧々にそう残してから立ち上がる。
今着てる服は新品だから、血で汚しちゃうのは勿体ないし。