複雑・ファジー小説
- 命短し、闘れよ乙女!! -episode of zero- ( No.211 )
- 日時: 2012/08/17 21:53
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: tt5B9b7t)
- 参照: くくり「:(;゛゜'ω゜'):」な回。
「もいっふるーっ!!(潮しゃまーっ!!)」
「くくりちゃん、もふもふ」
ユリア嬢の二番目の標的に選ばれてしまったくくりが短い手足を伸ばして、俺に助けを求めている。
助けられないことも無いが、助けたらまず間違いなく俺が襲われるだろうから、放置しておく。
くくりを助けると、初圖が「不公平だ!」と言って、拗ねてしまう可能性だってある。
くくり一匹が耐えてくれれば、他のみんなは幸せだし。
「そろそろ行きますよ」
「もゆっ!?(扱い雑じゃない!?)」
寧々がくくりの頭を掴んでユリア嬢から引き剥がす。
助けてあげること自体はいいと思うのだが、もう少し優しい助け方があったと思う。
「どこに行くんですか?」
ユリア嬢が寧々にそう尋ねる。
初対面時も俺に対しては敬語じゃなかったのに、寧々に対しては敬語だという点に少し解せない感じはあるが、まぁ、寧々は怒らせると怖いしね……。
「あなたの家の不能が飼っているうさぎを造ったところの暗部に触れてきます」
寧々がにっこりと悪そうな笑顔で、刺々しく言った。
彼女は一体どれだけ青年のことが嫌いなのだろうか。
「…………」
「ついて来る、と言うと思っていたのですが、意外ですね」
寧々の言葉を聞いても黙って特に何も言わないユリア嬢に、寧々の方が驚いたようで、彼女の方から言葉を発する。
「それはあたしが関わっちゃいけないところじゃない? お兄ちゃんは触れようとしないだけだけど、あたしに関しては触れようとすることが間違ってるよ。 だって、第三者だもん。 関係あるようで、関係ないんだもん」
寧々に解放されたくくりの尻尾を再び掴み、頬ずりをしているユリア嬢が珍しく真面目そうな、そして一人だけ『ブルジェオン』とはあまり関係ない、という理由であぶれたためか拗ねているらしく口を尖らせている。
「もいゆ?(ボクと一緒にお留守番する?)」
自身に激しい頬ずりをしてきているユリア嬢の方に視線を送りつつ、くくりがそう問いかけた。
今にも摩擦熱で火が上がりそうだけど、痛くないのだろうか。
くくりの言葉が何故か嬉しかったらしいユリア嬢が、表情を輝かせてくくりのことをむぎゅっと抱きしめる。
「今日からあたしがくくりちゃんを育てる!」
「あげないよ?」
くくりはいたくユリア嬢に気に入られたようだが、流石にあげることは出来ない。
こんな図鑑にも載っていない謎の生物と言えど、くくりはずっと隣にいてくれた大事なパートナーなのだ。
「今日はだいぶ落ち着いてますね。 安心しましたよ」
寧々がそう言って、優しく微笑む。
寧々の後ろにしゃがみガード体勢にある初圖がチラチラ見えるのだが、今は俺よりも初圖の方が精神的に問題がありそうだ。