複雑・ファジー小説
- 命短し、闘れよ乙女!! -episode of zero- ( No.215 )
- 日時: 2012/08/24 22:03
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: A0LvmysI)
- 参照: ユリア「(´・ω・`)」な回。
「もいるっ、もゆーっ!(凄いでしょ、ボクは『ブルジェオン』に関係なくても意志の疎通が出来るんだ!)」
「あー、だから、あたしと会話が出来るの?」
あたしの疑問に答えようとしているのかくくりちゃんが何故か万歳をする。
少し考えてから、どうやら丸を作りたかったけど、手の長さがだいぶ足りなかったらしい、という結論に至った。
「……ねぇ、潮さん達はいつもあんな感じなの?」
いつもなら躊躇してしまう質問だが、何故だかくくりちゃんにはあっさり尋ねることが出来た。
関係が崩れてしまったとしてもあまり生活に支障を来さないというのが、一番大きい理由かもしれない。
「もいっ(うん、割といつもそうだよ)」
「そっか。いつもあんななんだ……」
「もゆー(だから、ボクはいつもお留守番なの)」
問答をしつつ、くくりちゃんの手をプニプニ押してみる。
肉球はないものの、程よく弾力があって気持ちいい。
毎日、これをプニプニ出来るなんて、潮さんが羨ましくて仕方がない。
「もいるっふ……(ボクは潮しゃまの死に目には、ちゃんと立ち会えるのかな……)」
遠い目をくくりちゃんが小さくそう呟いた。
この小さな謎の生き物の中には、潮さんへの愛が詰まっているようだ。
「もいゆるっふ!!」
突然、叫んだくくりちゃんがあたしの腕の中から飛び出し、頭にタックルをしてきた。
あたしが床に頭をぶつけた瞬間、ゴンッという鈍い音が神社の中に響いた。
すぐさま、その音は他の大きな音にかき消された。
くくりちゃんがあたしの後ろにある柱に新たに埋め込まれた鉛弾を見て、慌ただしく両手をぶんぶんと振る。
「え……。 嘘、本物!?」
ドラマとか海外の事件の再現VTRで見たことはあるけど、本物なんてこれまで一度たりとも見たことが無い。
日本は銃社会じゃないから、なおさらだ。
……どうしよう。
恐怖で身体が動かない。
足が竦んで動かない。
「もいるゆっ!(ユリアしゃまっ!)」
くくりちゃんの声が遠くから聞こえた。
痛い。
時間が経つにつれて、どんどん痛みが身体中に広がっていく。
なんで、身体は動いてくれないのに、脳ばかり高速回転するのだろうか。
皮があっさりと破れて、肉が抉れて、血が溢れだして、あたしの身体を通り抜けて神社にも傷をつけていく。
「……あッ…………たす、けて……!!」
痛みの中で、やっと開いてくれた口から助けを求める言葉が零れでる。
「……おに、いッ……ちゃ……」
————この言葉がお兄ちゃんに届くことはなさそうだ。