複雑・ファジー小説

命短し、闘れよ乙女!! -episode of zero- ( No.218 )
日時: 2012/09/13 21:54
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: rc1iwi.s)
参照: 〆切ラッシュで多忙なう(´;ω;`)

「もゆるいっ!(助けて!)」

その辺に落ちている他の『ブルジェオン』をぶっ殺して、マスターに誉めてもらおう、といういつもの日課に勤しんでいたのだが、今日は『ブルジェオン』ではなく、水色の丸っこい変な生き物が転がっていた。

とりあえず、その生き物を拾い上げてみる。
もふもふしてて、気持ちいいし、よく見ると可愛い。
マスターが住んでいるマンションはペット可だっただろうか。

「もゆっ!(ふざけてる場合じゃないの!)」

丸っこい生物は両手をバタバタさせて、私の腕から逃れる。

「もゆるっふい!!(ボクの友達が撃たれちゃったの!!)」

丸っこい生物がつぶらな瞳からバケツをひっくり返したような涙を流しながら、逃げないように、と私の足に必死にしがみつく。

日本は銃の所持が禁止されているはず。
マスター曰わく、私の斧も刃渡り的に銃刀法違反なんじゃないか、とのことだが、銃に関しては特別な申請無しで所持している時点でアウトになるくらいだ。
そもそも、銃自体売ってないのではないだろうか。

「もゆーっ!(ボク一人じゃどうしようもないんだ!)」

足にしがみつくから物理的に一段階上がって、靴の上でじたばたし始めた丸っこい生物を持ち上げる。
靴の上からでも伝わるもふもふ感がたまらないが、どうやら緊急事態のようだから、とりあえずこの子の友達とやらの元へと向かってみようと思う。

それに、銃を使う、ということは研究所の圧力でなんとかなる『ブルジェオン』が関わっている可能性はかなり高い。

「もっきゅるい(もうすぐだよ)」

ちゃっかり私の頭に乗っかって自らの労力を削減している丸っこい生物が、そのまま直進して、と続けた。

丸っこい生物の指示通りに走り、神社の前で止められた。
なんだかタクシーの運転手のような気分だ。

「もゆーふっ!(あの子だよ!)」

丸っこい生物が先行して神社の鳥居をくぐる。
私も丸っこい生物に続いて神社の敷地に足を踏み入れる。
神社とか寺、教会といったような神聖な場所で悪事を働けば神罰が降りそうなものだが。

「もるっふい!(ユリアしゃま、死んじゃダメだよ!)」

丸っこい生物がやしろの中に横たわっている女の子を軽く揺さぶりながら、そう言った。
見るからに助からない量の出血をしている上に心臓の辺りにも弾痕がある。
それを見ても丸っこい生物は彼女の死を受け止められないのだろうか。

「……これはもうムリじゃないかな」

念のため、彼女の左手に触れ、脈をとってみるがピクリとも動かない。
私から見れば動かないのが当然であっても、丸っこい生物からしたら動いているのが普通なのだ。