複雑・ファジー小説

命短し、闘れよ乙女!! -episode of zero- ( No.221 )
日時: 2012/11/11 17:29
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: zist1zA5)
参照: 夢幻「ところで俺の出番は……壁|ω・`)」

「もるっふゆ!!(そんなはずないよ! 怪我してるだけで、まだ生きてるんでしょ!?)」

そう叫んで、丸っこい生物が私に飛びかかってきた。
見た目に似合わず案外馬鹿力だが、パワータイプの『ブルジェオン』である私からすれば、引き剥がすことは造作もない。

「死んでるに決まってるでしょ。 ただ寝てるだけだと思うなら、しばらく放置してみたら? カラスとかハエが集るだけだと思うけど」

食い下がる丸っこい生物にわざと辛い言葉を投げつける。
その後も、もいもいもゆもゆと反論してきたが、やはりどれも現実から逃れることさえもできないような嘘にすらなっていない嘘ばかりだ。

「もゆーっ、もるっふ! もっふ!(「嘘を吐くような人は神社に入れちゃダメ」って言われてるの! だから、出て行ってね!)」

丸っこい生物に言われるがまま、斧を担ぎ直し、鳥居をくぐり抜けて外へ出る。
近いうちに、名前も知らないあの子の死が受け入れられるといいのだけど。

—*—*—*—*—*—

「案外、余裕でしたね」
「全然余裕じゃなかったよ! 痛かったもん」

俺の背中に乗っているものを見て、寧々が小さく微笑む。
初図はぷーっ、と頬を膨らませて、俺の背中に乗っているそれのわき腹をつつく。

「うわ、かわいい!」

なんだか嬉しそうな初図が更にわき腹をつつく。
俺の背中に乗っているそれはつつかれる度に、「みぃ」などと言い、くすぐったそうに身体をよじらせる。

「ことり、いい子にしてたよ。 だから、お父さん達にまた会えたんだよね?」

俺の背中に乗っている子供——ノンブル2にあたる、ことりが子供特有の舌っ足らずな言葉を発する。

「うん、そうだよ。 ことりが初図の言うとおり、大人しく待ってたから迎えに行ったんだよ」

スーツをギュッとにぎって不安そうに問いかけてきたことりに返事をする。
本当は生きてると思ってなかったから、回収するものだけ回収してあのまま逃げるつもりだったのだが、寧々が拾ってきてしまったから仕方なくことりも一緒に回収してきたのだ。

俺から見たら厄介極まりないものだが、寧々と初図にあんな嬉しそうな表情をされたら持って帰らないわけにはいかない。

「お父さん、またいっぱい一緒に遊んでね」

背中の上で嬉しそうに喉をならしてそう言うことり。

遊びたければ寧々たちみたいに好意的で甘やかしてくれる人達に遊んでもらえばいいのに。

ただでさえ、和や性別という壁がある青年に、俺が子持ちだということがバレたら今度こそ突き放されてしまうのではないだろうか。