複雑・ファジー小説

命短し、闘れよ乙女!! ( No.25 )
日時: 2011/09/08 17:44
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: yjIzJtVK)

「見ての通り、俺は困ってないから大丈夫ですよ」

これでも、掃除や洗濯、炊事等家事は一通りこなすことが出来る。
そのため、後に家族が暮らす予定の部屋で、一時的にとはいえ一人暮らしをすることが許されたのだ。

「じゃあ、住み込みでお世話させてくださいっ」

和ちゃんが食い下がる。

『『よしっ、押し倒せーーっ!!』』

和ちゃんの「住み込みでお世話」という言葉に心の中の天使と悪魔が、異様なまでに敏感に反応する。

心の中の天使と悪魔への対応と和ちゃんへの返答に困っていると、タイミングよくピンポーンというインターホンの軽い音がなった。
おそらく、宅配便か新聞の勧誘だろう。
下の階の人が苦情を言いに来た可能性も否めないが、まぁ、その選択肢は考えないことにした。

何にしろタイミング的に救いの手となっているわけだしな。

「ちょっと待っててね」

和ちゃんにそう言い残してから、玄関へ向かいドアチェーンをかけたまま、扉を開く。
インターホンはついているのだが、モニターが故障中のため、もしもの時にそなえて来客の際はチェーンをつけて対応している。

ちなみに、インターホンを直すのは、母親が帰ってきてからになるらしい。

「はろーん、お兄ちゃん!! 元気してたー?」

扉を開けてすぐ、黒いショートヘアをピンで止めていて、和ちゃんとは違い明らかに強気そうなツリ目の少女が、ドアチェーンによって開閉が制限されている扉の間から見覚えのある顔を覗かせる。

「ユリア!? お前、帰ってくるの来月じゃなかったのか!?」

そう来客者は、俺の年子の妹である葛城ユリアだった。

し一昨日辺りに、母親から「ユリアがそっちの高校の編入試験に受かったから、来月の始めに送る」という旨の連絡を受けていたのだが、あれはフェイクだったのか……!!

「やっぱ、東京は広いね。 久々に歩き疲れちゃったもん。 早速だけど、上がっていい?」

ユリアが両手を上げ、大きく伸びをしながら、言う。

「い……」

「いいよ」と言いかけて、止める。
よく考えてみたら、今、部屋に上げたら和ちゃんの存在がバレるじゃねぇーか……!!

そんなことになったら確実に母親にチクられて、問答無用で実家がある青森に強制送還されてしまうだろう。

「待って。 1分間だけ待って!」

ユリアに言い残し、リビングへ全力で駆け出す。

後ろから「お兄ちゃん、エロ本なら気にしないよ?」という声が聞こえたが、気にせず、リビングの扉を開く。

「ご用事は終わったんですか?」

和ちゃんが笑顔を浮かべ、出迎えてくれる。
鼻の下が伸びてしまいそうなくらい可愛いのだが、今は眼福に与っている暇はない。

「へぇー、お兄ちゃん、その子彼女? ドア、開きっぱなしはいくらなんでも無用心じゃない?」

すぐ後ろから聞き慣れた妹の声が聞こえる。
しまった……! ドアを締め忘れるだなんて、初歩中の初歩のミスだ……!!

「違っ「じゃあ、誰ー?」えっと……」

ニヤニヤと楽しそうな笑みを浮かべているユリアの質問に、思わず言葉が詰まる。