複雑・ファジー小説
- 命短し、闘れよ乙女!! ( No.37 )
- 日時: 2011/09/12 20:18
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: yjIzJtVK)
- 参照: 新キャラ(男)、登場!
「あっ、いたいた!」
公園につくや否やユリアが、すべり台の奥にある広場に設置されたベンチで寝ている薄青色の髪の人を指差す。
確かに、遠くから見ただけでも顔が整っていてモデル体型、だということがよく分かる。
男の俺でさえも、カッコいいと思うのだから、女性にとっては信仰対象となっても不思議はないだろう。
「和ちゃん、あの人で……ってアレ?」
あの人が知り合いかどうかを和ちゃんに確認しようとしたところ、さっきまで隣にいた和ちゃんが忽然と消えていた。
慌てて辺りを見渡すと、薄青色の髪の人がいるベンチの横に駆け寄っていく和ちゃんの姿が視界に入る。
「お兄ちゃん、あたし達も向こうに行くべきじゃない?」
ユリアが和ちゃん達のいる場所を指差し、俺に話しかけてくる。
勿論、否定する理由などないので、首を縦に振って肯定の意を示し、向こうへと駆け出す。
「あのー」
俺とユリアが走って、和ちゃん達の近くまで駆けつけると、彼女は既に薄青色の髪の人に話しかけていた。
「んぅ……? 何か俺に用があるの?」
薄青色の髪の人が妙に色っぽい声を出し、眠そうに目を擦りながら起き上がる。
寝ていたせいで乱れた髪をかきあげたり、あくびをする動作さえも色っぽく感じる。
俺の横にいるユリアが、俺の肩をバシバシと馬鹿力で叩きながらキャーキャー言っている辺り、この人がユリアのストライクゾーンど真ん中なのだろう。
服装は普通のスーツだというのに、薄青色の髪の人の纏う雰囲気や仕草の一つ一つが妙に色っぽい。
世界中の誰よりもホストに向いていそうな感じだな。
「上から2つ開いたワイシャツから覗く胸とか超色っぽいし、さっきしたあくびの動作とか髪をかきあげる仕草も半端じゃないオーラを感じた!」
ユリアが拳を握って、全身から炎を出さんばかりの勢いで、力強く熱弁する。
注目した点が同じだった辺りに、確かな血の繋がりを感じる。
「はい、あなたに質問があります! あなたは私と同じ『ブルジェオン』ですよね?」
おかしなテンションになっているユリアの方をチラッと見たものの、流石にスルーしようと決めたらしい和ちゃんが、薄青色の髪の人に問いかける。
和ちゃんが今言っていた『ブルジェオン』っていう聞いたこともないあの言葉は何だ……?
「そうだけど?」
薄青色の髪の人が、いまだ眠たそうに大きくあくびをしながら答える。
俺とユリアは『ブルジェオン』という言葉の意味さえ分かっていないというのに、話はどんどん進んでいく。
半ば立ち聞き状態の俺が言えることじゃないが、話が理解できないというのはどうにもスッキリしない。
「わぁ! こちらに来てから、初めてブルジェオンの方にお会いできました!」
和ちゃんが知り合いに会えた喜びからか、無邪気な子供のようにラベンダー色の目をキラキラと輝かせてはしゃぐ。
やはり、和ちゃんは何をしても愛らしく感じるなぁ……。
「そうなの?」
薄青色の髪の人が和ちゃんのはしゃぎようを見て、少しだけ面倒くさそうな表情になる。
無邪気な動作をする和ちゃんは、これ以上ないくらい人畜無害な雰囲気を醸し出しているというのに、彼は一体、何が気に入らないのだろうか。