複雑・ファジー小説
- 命短し、闘れよ乙女!! ( No.44 )
- 日時: 2011/09/20 10:06
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: yjIzJtVK)
「そうなのか……。 それじゃあ、俺からのお願い聞いてくれる?」
潮さんが色気全開の容姿に似合わない子犬のようなウルウルとした目で、俺とユリアに上目遣い気味の姿勢になり、全く脈絡のないことを言い出す。
似合わない、と言ったものの、世間一般の女性ならギャップ萌えとして受け取られるだろう。
つまるところ、悔しいことに、潮さんは何をしても様になる。
「いいよ、いいよ!! 何でも言って!」
見事にギャップ萌えに嵌ったユリアが、潮さんの両手を包み込むようにギュッと握り、目をキラキラと輝かせながら承諾する。
俺の意志は完全無視を決め込まれているようなので、とりあえずは口を挟まないことにした。
「お腹空いたから、何か頂戴?」
潮さんが上目遣いのまま、ユリアに頼み事を告げる。
…………うん、まぁ、予想はしてたけどな。
* * * * * * * *
「美味しいよ、青年」
ファミレスに入るか、コンビニで買うか迷った末、結局、我が家で何かあるものを食べさせることになった。
そのため、現在、我が家には俺とユリア、和ちゃんと潮さんの4人がいる。
和ちゃんとは違い、ゆっくりとしたペースではあるのだが、やはり食べる量は多いようで、既にユリアにおかわりを要求し始めていた。
「お兄ちゃん、もう大福ないよー?」
潮さんのおかわりを探そうと、キッチンに設置されている一般的な白い冷蔵庫を開けたユリアが教えてくれた。
俺のおやつと朝ご飯が消えたわけだが、おやつは我慢すればいいし、朝ご飯はレトルトの白米にふりかけでもかけておけば、問題ないだろう。
「潮さん、レトルトのご飯とか食べます?」
「うん、あるなら食べるよ」
…………俺の朝ご飯が消え去った。
やむ終えないから、明日の朝はあればチョコレートのような軽いお菓子をつまみ、それさえもなければ耐えよう。
五目そばやスパゲティといったポピュラーな冷凍食品はあるのだが、朝から重いものを食べる気にはなれないタイプなのだ。
「ねぇ、お兄ちゃん。 あたしは構わないんだけどさ、和ちゃんと潮さんを泊めるのお母さんにバレたら不味いんじゃない?」
ユリアが突然常識的な考えを述べた。
言われてみれば、今日、初めて知り合った見ず知らずの男女を泊める、ということを快諾する親は普通いないだろう。
我が家の母親は厳しい部類に入るから、雷が落ちてくること間違いなしだ。
「ヤバいな……」
ユリアに考えを率直に述べる。
俺にとっては、とにかくヤバい、以外の言葉が思いつかないくらいの死活問題だ。
「大丈夫。 もしも、何か言われたら『俺の彼女と彼氏です』と答えればいい」
潮さんが彼なりの解決案を提示する。
……どこからつっこめばいいか分からないほどツッコミどころがある解決案だが、まずはこれを言って何が解決するのかを教えて欲しい。