複雑・ファジー小説
- 命短し、闘れよ乙女!! ( No.50 )
- 日時: 2011/09/27 15:46
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: U3CBWc3a)
解決したい問題が親子離縁であれば話は別だが、それ以外に関しては全くもって効果はないだろう。
「……彼氏? まさか、お兄ちゃんと潮さんはこんな感じの展開に!?」
ユリアが自分のカバンをガサゴソと探り、一冊の本を取り出す。
それをパラパラと流し読みしながら、目当てのページを開き、俺と潮さんに見えるように突き出す。
そこには、明らかにR指定が入っているであろう男2人のベットシーンが描かれていた。
「ユユユユユユリア!? こんな本、どこで買ってきたんだ!?」
「え? 桑原堂だけど」
俺の質問に、顔色一つ変えずにユリアが答える。
桑原堂は俺がさっき行ったスーパーの近くにある本屋だ。
つまるところ、ユリアは俺を訪ねてくる前にあの本を買ったということになる。
……妹にとって、俺の存在はいかがわしい漫画以下のようだ。
「青年がどうしてもって言うなら……」
潮さんが顔を赤らめ、身体を色っぽくくねらせる。
しかし、その右手にはしっかりとご飯をつまんだままの箸が握られているため、冗談だというのは分かる。
というか、冗談じゃないと困る。
「ユリアさん、おかわりもらえますか?」
いつの間にか潮さんの横に座っていたらしい和ちゃんが、ご飯用のお椀を掲げ上げながらユリアに問いかける。
普通なら、「空気を読め」と言われるのだろうが、今のような読んではいけない類の空気を壊してくれるのはありがたい。
「あるよー。 よそるから、ちょっと待っててね」
和ちゃんからお椀を受け取り、ご飯をよそるためにユリアがキッチンへと早足で向かう。
それにしても、どうして、和ちゃんもご飯を食べてるんだ……?
「はいよー!」
ユリアが、和ちゃんの前にご飯がよそられたお椀を置く。
そして、和ちゃんはそれをすぐに大福の時ほどではないが、普通の人と比べたらだいぶ早いスピードで食べ始める。
「和ちゃんって、餌付けしたくなる雰囲気だよねー」
和ちゃんにご飯を与えた犯人だったらしいユリアが、ニコニコと笑いながら言う。
確かに、ご飯を食べている和ちゃんは、さながら愛くるしい兎のようで可愛らしい。
だからといって、餌付けしていい理由にはならないけどな。
「潮さんは、もう契約者の方を見つけましたか?」
和ちゃんがご飯を頬張りながら、潮さんに問いかける。
そういえば、契約者だとかブルジェオンだとか謎めいた単語が沢山あったのに、未だ何一つとして解明できていない。
「ん? まだだよ」
潮さんがご飯を食べながら、しゃべる。
「あの!」
契約者などについて尋ねようと思って潮さんに声をかけたのだが、思わず力を入れすぎてしまい、語調が強くなってしまった。
すると、何故だか潮さんが顔を赤らめる。
「青年、気持ちは嬉しいけど……答えは明日まで保留にさせてもらえないかな?」
「良かったね、お兄ちゃん! 脈ありみたいだよ!!」
どう解釈されたのか全く理解できないが、どうやら告白だと勘違いされたようだ。
俺の横では、ユリアが満面の笑みを浮かべ、拍手をしている。
しかも、何が何だか分かっていない和ちゃんまでも、ユリアに釣られて拍手をしている。
誰でもいいから、俺を助けてくれ……!
『よし、来た! 俺に任せてよ!』
出てくる度に事態を引っ掻き回していく、純白の衣装、天使の輪、マジカルステッキという電波三点セットを装備した俺の心の天使が、自信満々の表情で現れる。
前言撤回。
ある程度まともな人、助けに来てくれ……!!