複雑・ファジー小説

命短し、闘れよ乙女!! ( No.54 )
日時: 2011/10/15 17:09
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: Hfcg5Sle)
参照: パピヨンとは、フランス語で「蝶」という意味ですw

「そうじゃなくて! 契約者とか『ブルジェオン』って何なんですか?」

軽く仕切り直してから潮さんに向かって問いかける。
俺の問いに潮さんが一気に真面目な表情になり、お椀の上に箸を置く。

そのすぐ横で、和ちゃんがモグモグとご飯を食べているため、シリアスな場面とは言い難いが。

「本当に知りたいの?」

潮さんが真面目な表情のまま、真剣な声色で問うてくる。

「え? あ、はい」

軽い気持ちで聞いたのに真面目に返され、戸惑いを隠しきれないままの俺が答える。
それでも、潮さんが使った超人的なスキルの数々は気になるから、彼の問いに「はい」と答えた。

「……まぁ、どうせ隠しきれないだろうしね」

潮さんが小さく呟いて、何故か俺の手を握る。

それを見たユリアが、「うはっ」と言いながらテーブルの上にあるティッシュ箱からティッシュを一枚取り出し、鼻を抑える。
まぁ、まず間違いなくさっきの本のような妄想をしていて鼻血が出たのだろう。

「俺と契約して『パピヨン』になってよ」

…………何だろう、この聞いたことのあるセリフ。
しかも、こういうのって普通は女の子と契約するものじゃないの……?

和ちゃんにこの話を持ちかけられるならまだ分かるが、何故に潮さんフラグが立ったんだ?

「え? 潮さんも……?」

俺に契約云々の話を持ちかけてきた潮さんに、和ちゃんが箸を止め、不思議そうな顔で問いかける。

「うん、間違いなくこの人であってるよ。 ユリア嬢はニアピンくらいだけど、この青年はクリーンヒット」

クリーンヒットの意味を間違えているような気もするが、そんなことよりも気になることがいくつかある。

「あの……話が掴めないんですけど……?」

正直に言うと、いくつかどころか何もかも理解しきれていない。
そもそも、「あなたたちは何者ですか?」というような質問に「俺と契約して『パピヨン』になってよ」という答えが返ってきたところから、既に分からない。

ユリアは脳内補完……つまるところ勝手な憶測や妄想で納得しているようだが、俺には分からないことが多すぎて脳内補完できる域にすら達せていない。

「まずブルジェオンっていうのは、限りなく人間だけど少し異なる存在なんだよ」

潮さんがそう言いながら、左の手のひらに氷できた花を出現させて、俺に渡す。
このまま固まっていても仕方がないから、潮さんから氷の花を受け取る。

「青年、それを全力で和に投げて」
「……潮さん、和ちゃんに怨みでもあるんですか?」

潮さんが投げろと指示してきた氷の花は、ところどころ鋭利に尖っている。
尖っていることに関しては氷という物質の性質上仕方ないのだろうが、そんな危険物を女の子めがけて投げる必要せいは無いはずだ。

「で、和は飛んでくる花を能力使って砕いてね」

…………潮さんは、今のところ無茶ぶりしかしていない気がするのは気のせいだろうか。