複雑・ファジー小説

命短し、闘れよ乙女!! ( No.59 )
日時: 2011/11/05 16:56
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: Hfcg5Sle)

「え!? お兄ちゃん、潮さんと何してたの!?」

俺と潮さんのやりとりを聞いて、完全に誤解しているユリアが問いかけてきた。

「ユリアさん! 鼻血出てますけど、大丈夫ですか!?」

純粋な目で和ちゃんがユリアを心配そうに見つめ、ティッシュを箱ごと差し出す。
ユリアはどれだけ大量のティッシュを消費する気なのだろうか。

「あっ、ユリア嬢。 もう大丈夫だよ」

いつの間にやら、スーツも着終わっていた潮さんがユリアの肩を叩きながら言う。
すると、すぐに鼻にティッシュをあてたままのユリアが振り返る。
……なかなかにシュールな光景だな。

「お兄ちゃん、写真は?」
「だから無いってば!」

開口一番、ユリアがさっき拒否したはずの写真を要求してきた。
俺の妹はこのままの道を歩んでいくと、大変なことになりそうだな。

「あの……夢幻さん」

何故だかもじもじと動いている上目遣い状態の和ちゃんに呼ばれた。
トイレに行きたいのかな……?

「トイレならキッチンの横にあるよ」
「いえ、トイレじゃなくてですね。 夢幻さん、まだ潮さんと契約してませんよね……?」

トイレの場所を示した俺に、和ちゃんが否定しつつ不安げに尋ねる。
そういえば、さっき潮さんが「契約」だとか「パピヨン」がどうのって言っていたな……。

「うん、してないよ」

話を持ちかけられこそしたが、その『契約』とやらはしていない。

「よかったです! これで私が夢幻さんと契約出来ます!」

和ちゃんが天使のような輝かんばかりの柔らかい笑みを浮かべながら、腹黒い一言を言う。
……序盤から薄々察してはいたが、和ちゃんは言動の端々に小悪魔っぽいところがあるなぁ。

『『呼んだ?』』

俺の心の天使と小悪魔がひょっこりと顔を覗かせる。
天使とか小悪魔という単語は出てきたが、お前らを呼んだわけじゃない。

「ねぇ、さっきから気になってたんだけど、『契約』って何? 魔法少女になれるアレ?」

ユリアが和ちゃんに問いかける。
俺も気になっていたところだし、代わりに聞いてくれるのはありがたい。

「えーと……。 潮さん、説明お願いします」

要点が上手くまとまらなかったらしい和ちゃんが、潮さんに丸投げする。
潮さんはというと、疲れたのか、リビングのソファで横になっていた。

最初から遠慮しない人だったから、あまり驚けない。

「簡単に言うと、俺たちの能力媒体になるっていうことだね。 俺たち単体で出せる能力には限界があるんだけど、媒体となる契約者——『パピヨン』がいるとその限界を大幅に引き上げて、新たな伸び幅を作る。 詰まるところ、『パピヨン』がいると俺たちの能力値が底上げされて、生き残れる確率が上がるんだよ」

潮さんが細かくも要点だけをキレイにまとめて、伝えてくれる。
和ちゃんは「おー、すごいです!」と言って、拍手を送っている。