複雑・ファジー小説

命短し、闘れよ乙女!! ( No.61 )
日時: 2011/12/07 14:29
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: pFXOI/OC)
参照: 微エロ注意でございまするw

「大丈夫、青年の意思を無視してまで貞操を奪うつもりは無いよ」

俺を安心させるためなのか潮さんが柔らかい笑みを浮かべる。
だが、全然、安心出来ない。

「どうしたの、お兄ちゃん? ゴキブリでも出た?」

廊下へと繋がる廊下から、大量のティッシュ箱を抱えたユリアが顔を覗かせる。
しかし、その方向から鼻血の噴出音が聞こえたのと同タイミングにユリアの足音が遠ざかっていく。

潮さんがカッコいいのは男の俺でも分かるが、実兄の助けを求める声よりも鼻血を止めることを優先したのは地味に堪える。

「だから、青年。 錯誤感情で構わないから、ちょっと興奮して」
「無茶ですよ!?」

もう充分に俺の意思は無視されていると思うんだけどなぁ……。
和ちゃん相手にならまだ出来ると思うが男——しかも、自分よりも背の高い人相手に性的興奮を覚えろ、と言われてもそう簡単に出来るものではない。
というか、出来たらそれ相応に問題だ。

潮さんが自分の下でジタバタと暴れている俺と廊下の奥で大量のティッシュを鮮血に染めるという作業に勤しんでいるユリアを見て、「このままだとユリア嬢が失血死するね……」と呟く。
それについては、激しく同意する。

「しょうがないなぁ……」

そう言って、潮さんが自分のズボンのベルトを外す。
何をどうしょうがなく思ったらこんな行動に出るんだ!?

しかも、まさかとは思うがズボンを脱いでしまえば彼の痛々しい傷痕が衆目に晒されてしまう。

「潮さん、絶対に止めてくださいよ!?」

自分のベルトを手に持った潮さんに釘をさす。

「ん? 何を?」

潮さんが色っぽく濡れた瞳をこちらに向ける。
彼の表情や言葉からして、俺の考えとはてんで違うことを考えているらしい。

「あー、あったあった」

潮さんがスーツのポケットを漁り、目当てのものを取り出す。

彼のポケットから出てきたものは、誕生日ケーキにのっているものよりも一回り大きい蝋燭だった。

何故そんなものを持っているんだ、とか、一体何に使うんだ、と言った疑問が大量に湧き上がってくる。

潮さんが一緒に取り出したライターを着火。
続いて、それを蝋燭に点火する。

「これは俺の予想なんだけど、青年はどちらかと言ったら虐められて悦ぶ人種だよね?」

潮さんが色っぽい顔に嗜虐的な笑みを浮かべ、今にも溶けた蝋が垂れそうな蝋燭を俺の鎖骨の辺りに近づける。

「悦びませんよ!? っていうか、何でベルト外したんですか?」

恐らく、フェイクの為なのだろうが、気になったから一応聞いてみた。

「これはね、鞭代わりにしようかと思ってたんだけど、悦ばないならいいや」

潮さんがベルトを再び装着する。
何だか分からないけど、潮さんが服を着る時は大概何かを諦めた表情をしている気がする。