複雑・ファジー小説
- 命短し、闘れよ乙女!! ( No.73 )
- 日時: 2011/12/31 11:12
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: ADRuIPKx)
- 参照: すみません、コメは後で返します((汗
「青年、怖い」
「む、夢幻さん。 本能が危険信号を出している気がするんですけど……」
潮さんと和ちゃんが魑魅魍魎の類のオーラを出しているユリアから身を守ろうと、俺を盾にすべく後ろに隠れる。
母親の影響を受けたようで、ユリアも時々人を震え上がらせるような表情をすることは前から間々あった。
だから、既に対処法があったりする。
「明日は燃えないゴミか……」
床に落ちたアレな本を拾ってから、キッチンの冷蔵庫の扉に貼ってあるゴミの収集日表を確認。
そのまま、本を入れるためにゴミ箱の蓋を開ける。
「わー!! 待って待って!!」
ようやく自分の持ち物の危機に気付いたユリアが俺の足下までスライディングし、そのまま飛び魚のように跳ね上がり、俺の手から本を奪う。
ユリアは相変わらずいらないところで凄い運動神経を使うなぁ……。
「無事で良かったぁ……」
ユリアがアレな本を我が子のように抱きしめる。
なんとも珍妙な光景だ。
ヤバい気配が収まったことを察知した潮さんがもそもそと毛布から出てくる。
次の瞬間、その毛布をユリアが電光石火の勢いで拾いあげ、顔を埋める。
「潮さんの匂いがする……!!」
瞬時に潮さんの顔から血の気が引く。
和ちゃんの唐突な攻撃に対してはあんな冷静に対処していたのに……。
……こんな変態的行動をとる奴はそうそういないだろうけどさ。
「…………青年、この家のお風呂は施錠できる?」
潮さんが縋るような目を向けながら、そう言った。
「え? 泊まるつもりでいるんですか?」
「ダメなの?」
「ダメなんですか?」
俺の問いかけに潮さんのみならず和ちゃんもキョトンとした顔をする。
この人達は厚かましいのか常識がないのか無邪気なのか図りかねるな……。
「ダメですよ。 そもそも、ユリアが来るっていうのも知らなかったから必要なものも足りないですし。 布団なんて二枚しかないです」
母親からは「私が上京する時に送る」と言われているし、布団というものはピンキリと言えども高い。
というか、部屋数も足りないし、有ったとしても布団を四枚もひけるかと聞かれたら難しいと答える。
「そしたら、俺は青年の布団に入るから、和はユリア嬢に入れてもらいなよ」
潮さんがそう言って、和ちゃんをぐいぐいとユリアの方へ押す。
「……い……嫌です!!」
一瞬躊躇いが見えたものの、和ちゃんがはっきりと自己主張する。
さすが武闘家、潮さんに押されてもなお、足の筋肉を駆使してその場に留まり続ける。
「じゃ、じゃあ、俺と和が青年の布団で寝るから、青年はユリア嬢に入れてもらうっていうのはどう?」
「生理的に無理」
潮さんの家主の意見を無視した案にユリアがキリッとした顔で即答した。
どうせダメだと言うつもりであったが、なんか寂しいものがあるな……。