複雑・ファジー小説
- 命短し、闘れよ乙女!! ( No.97 )
- 日時: 2012/02/06 21:56
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: pvHn5xI8)
- 参照: コメは後で返します(´;ω;`) 毎度毎度すみませぬ……。
「洋食……スクランブルエッグとかですか?」
和ちゃんが朝食のおかずの中でもメジャーなものを挙げる。
「うーん……。 ずっと適当にパンだけ食べてたから、おかずってあんまり思いつかないなぁ」
それこそ今日も大福で済ませようとしてたし。
食パンのストックは一斤くらいあるが、冷凍しておけば結構持つという理由で賞味期限ギリギリまで手をつけないことが多い。
「じゃあ、思いつく範囲で作ってみますね」
和ちゃんが柔らかい笑みを浮かべ、そう言った。
裸エプロン効果もあってか、キッチンが別世界に見える。
そんな別世界を作り出した和ちゃんが突然思い出したように、パタパタとこちらに駆け寄ってくる。
昨日、「暴れると苦情が来る」と言ったのを覚えているらしく、足音をたてないように気を使ってくれている。
ユリアなんて昨日スライディングしてたのに、それを見ても遵守してくれるとは思ってもみなかった。
「…………和ちゃん?」
「夢幻さん、これでもまだダメですか?」
和ちゃんが裸にエプロンだけという格好で俺の上に重ねる。
結論から言うと、なんか色々ヤバい。
胸がはだけちゃって見えそうだし、顔も近いし、身体も限界まで密着している。
これに何も反応しない男はいないのではなかろうか。
俺が勝手にドキドキしていると、突然、俺の左手から淡いピンク色の光が輝き出す。
…………何これ?
「夢幻さん、嬉しいです!」
和ちゃんが身体を密着させたまま、そう言う。
発光が止まった左手を見ると、人差し指に銀の指輪がはまっていた。
それはデザイン的にありふれたものだが、俺の所持品には無いものだ。
指輪は貰い物のクロムハーツを一つ持っているだけだったはず。
「普通でよかったです……」
和ちゃんが俺の上から退きながら、俺が不思議そうに見ている指輪を見てそう言った。
まだ記憶の整理が追いついていないけど、気になったことを聞いてみるか。
「えっと……これは契約が成立しちゃったっていうこと?」
第一に聞かなくちゃいけないであろうことを尋ねる。
すると、和ちゃんが可愛らしい笑顔を浮かべて、ハキハキとした声で答える。
————はい、と。
「その指輪は私と契約した証です。 契約の際に表れるものは『ブルジェオン』によってまちまちらしいです。 中には刺青のようなものが出るような方もいるらしいので、普通でよかったなぁ、と思って……」
続いて、和ちゃんにこの指輪と「普通でよかった」という言葉の意味を問うと、丁寧に説明してくれた。
まぁ、取り外しの可不可は大き……あれ?
「これ、外れないの?」
ついでだから、和ちゃんに聞いてみる。
すると、和ちゃんが少しの間考えてから、こう答えた。
「大丈夫です、水に触れても錆びませんから!」
「いや、そういうことじゃなくてね?」
どうやら、さっきまで割とシリアスだった和ちゃんに天然さが帰ってきたらしい。
「青年、服貸して」
潮さんが俺の部屋からひょこっと顔を出す。
服といえば和ちゃんも着てるんだか着てないんだが微妙なラインだけど……。
「まさか、換えを持ってないとか無いですよね?」
潮さんの服も和ちゃんの服も昨晩洗ったため、現在は良くても生乾き状態だ。
「無いから頼んでるんだよ?」
潮さんが首を傾げて爆弾発言をかます。
可愛らしい動作で誤魔化そうとしているのだろうが、全然可愛くない。
「最悪下着は無くてもいいから。 俺が焦ってる理由は悟って!」
潮さんが飄々とした性格に似合わずワタワタと慌てる。
あっ、そうか!
服が無いと、あの痛々しい傷が見えちゃうからか!
「ちょっと、待ってください。 何か出しますから! 和ちゃんはご飯を作っててもらってもいい?」
「はい、分かりました!」
和ちゃんの返事を待ってから、潮さんがいる俺の部屋に入り、扉を閉める。
俺よりも潮さんの方が少し高いから、少し大きいからある程度大きい服を選ばないとだよな。
うろ覚えだが、俺の部屋の洋服棚の二段目に大きめのジャージが入っているはず……。
「あっ、青年、和と契約したの!? 朝から盛っちゃってー」
潮さんが俺の指に嵌っている指輪を見て、子供のように頬を膨らませる。
男相手に性的興奮をすることを要求していた人にだけは「盛ってる」とか言われたくない。