複雑・ファジー小説
- Re: ジャック・ザ・リッパー_薔薇を好む悪魔_ ( No.27 )
- 日時: 2011/08/31 16:04
- 名前: 爆 ◆fcK1rqhpnk (ID: 4fy95xCZ)
「今日は野宿だな…」
そう言うと、曲がって来たところまで戻り、街灯に腰を掛ける。
街灯には虫が集り、オマールにも集る。
蚊、蝿、蛾…
さすがにも、耐えることが出来ずその晩は寝ることが出来なかった。
朝になり、オマールは立ちあがり、再び、30㎝先の曲がり角を曲がる。すると、新聞運びが丁度来た。新聞運びの名はシャーロック・マロン、変わった苗字をしているが、本名ではないと言い張っている。恐らく自分の苗字が気に入らないのだろう。
これがまた感がよく冴える男で…猫探しを頼まれたり、浮気調査、まるで探偵だ。
「あっオマール君、これ、今日の新聞だ。よろしく。」
開くと、もう昨夜の事が載っている。
マスコミの素早さには誰も勝てないだろう。
良く編集が間に合うな、オマールはそう思いながら、自分が犯した一面をじぃっと見つめる。
それにしてもシャーロックは実になれなれしい…
頭の冴え具合で、元刑事とか元学者だとか色々の説が立っていが、何者なのかは誰も知らない。
「ありがとうございます。マ・ロ・ンさん。」
わざとマロンの部分を強調した。
しかし、シャーロックは悲しむどころか愉快に笑う。不思議な男だ…
「ッハハハハハ。愉快愉快。そんなに証拠を残して…どうするつもりだい?ジャック君。」
笑った後のシャーロックの真剣な顔を見て、オマールの顔が青ざめる。
「え?」
思わず聞き返す。心臓の飛び出そうになりながら。
どうして、昨夜の事を…
「君、頬にまだ血の跡が残っているよ。しかもこの新聞に乗っている、証拠写真の薔薇-----------」
新聞を開いて、薔薇の写真の茎に指を指す。
「恐らく、長かったんだろう子宮に刺すには…。だから茎を切ったんだろう?君が手入れしている庭は毎日見てるから分かるんだけど--------。」
今度は庭の外に落ちている1本の薔薇を持つ。
「君は少々切り方が独特でね。ハサミで茎を挟んで茎を回しながら切っていくだろう?だから、切り終わった後に、切り口の少し上にあとが出来てしまうんだよね。茎を完璧に固定することは無理だから、どうしても途中でぶれて別のところからまた切り始めるからだろう?よってこの写真の薔薇はあきらかにあなたが切ったって事になる。」
確かにそれはオマール独自の切り方だ。等しく切ることで断面に角度が付かない、傷は付くがそっちの方が美しいと判断したからだ。
「マロンさん…あなた何者?」
お手上げかの様にもう半分笑いながら聞く。
「シャーロック・ホームズ、ただの新聞配達員さ。」
開いた新聞を元に戻し、顔の前でゆらゆらと揺らす。
「ホームズねぇ…それが本名?」
「YES!!」
バイクにまたがる。
ヘルメットをかぶるとまた長々としゃべり始める。
「僕は君の事を警察に押し付けたりなんかしない。逮捕をするのは警察の仕事だからね。でも警察から見たら少し難しい問題かもね。もう少し簡単にしてあげれば?あ!それとももっと難しくして、僕と遊んでみる?」
返事もさせる間もなくしゃべり続ける。
「うん。それがいい。じゃあ見せてくれよ。完全犯罪をね。」
そう言い残すとバイクにエンジンをかけ、去る。
「面白い…やって差し上げましょう。」
ドルトン邸の前での出来事はほんの数分だった-------