複雑・ファジー小説

Re: —Book on happiness— ( No.10 )
日時: 2011/08/18 16:11
名前: サポロ (ID: T3.YXFX2)

彼女は頭を下げると同時に、光の粒子がフワッと広がった。
そして右からは甘い香ばしい匂いがして、僕は横を振り向く。


「お茶を入れましたよ」
「あぁ、アリガトウ」


僕は紅茶を口に運んだ。


「今日のおやつは大樹のショートケーキです」


大樹をモチーフにしただろう少し大きめのショートケーキが置かれた。
ソラを見るとソラは既に食べ終えていた。
目の前の少女にも、同じ物が置かれる。


「・・・あ、あの」
「ん?」
「こ、これ、どうやって・・・」




もしかして、《食べることが判らない》のか?


たまにそんな種族が居る。
食べる事を必要としない種族。
マレにしか居ないけれど、居る事は居るらしい。
僕はフォークでケーキを切って、彼女の口に少しだけ含ませた。


「ノドを鳴らすんだ。つばと一緒に」


コクンッと、のどが鳴る。
すると少女はびっくりしたように僕を見た。


「何か、とても幸せです!」
「そう。それはよかった」
「あのっ」
「ん?」


少女は手に、黒い石で出来ていて、黒と赤の粒子が飛び散るナイフを僕に見せた。


「このナイフ、私が作ったんですッお礼にっ」
「これは・・・?」
「月の光を百年間浴びさせた水に、太陽の石を浸して作ったナイフです」


僕はソレを受け取って、少しだけ興味を惹いたように見る。


「アリガトウ。貰っておくよ」
「いえっ!あの、それじゃあ私ッもう行きますねっ」




———カラランッ




図書館を去った彼女の座っていたところに、一枚の葉っぱが落ちていた。
その葉っぱに触れると、弾けて消えてしまった。


「・・・」
「世界様?」
「・・・いや、何でもないよ」


僕はそういって、何時もどおりの図書館を眺めた。
貰ったナイフを、机の上に置く。


「それにしても、最近は来館者が多いな」
「えぇ。よい事じゃないですか」
「・・・そうかな」
「そうです」


ニッコリ笑う《死神》に、僕は何時もどおり溜息を吐く。


「それより君達、《幸せの本》、探さなくていいの?」
「一時休戦、ですよ。この図書館にあることは確実何ですけどね」
「・・・何で断定できるの?」
「私は探すのは得意ですから」
「・・・でも僕、そんな本見たこと無いよ?」
「実を言うと《幸せの本》は普通は見えません」
「それじゃあ探せない」
「普通じゃ探せない、だけなんですよ。見えないだけなんです。でも、確かにここにあるはずですから・・・。ソレを探して主はここに来ていますし」


ソラはまだ本を読んでいる。
本はかなり厚めだった。
読むのに時間が掛かるだろう。




「ソラは何で、本を探しているの?」
「ソレは主自信が話さなければ成らない事です」
「じゃあキミは?」
「私は、主についていくだけですから」






そういうと《死神》は僕の前のカラッポに成ったカップを下げた。
角砂糖が小瓶の中でキラキラと輝いている。




明日は、誰か来るのかな。