複雑・ファジー小説

Re: —Book on happiness— ( No.2 )
日時: 2011/08/17 22:54
名前: サポロ (ID: T3.YXFX2)

「ねぇねぇっ!世界っ今日は何がおすすめ?」
「・・・ヘブンズ・ヘブン、かな」





《第一話》—世界の図書館—





「ソレ、何回も読んだッ」

「・・・じゃあ何時もどおり幸せの本を探せばいいじゃないか」

「たまには普通の本を読みたいんだよ」


そういって棚に手をかける少女。
ソラの右手から、蒼い粒子が飛び散っている。
彼女はアンドロイドだ。
粒子が飛び散っていても、別に可笑しくは無い。
コトンッ・・・と、机の上にカンテラが置かれた。


「・・・ん」

「今日のおやつはヘブンズ・プリンです」

「天国のプリン?」

「えぇ。このプリンは実際に天国からお取り寄せした物です」


真顔で言う彼に、僕は溜息を吐いて、プリンを口にした。
美味しい。



「あー!うぁうぁーっ」



——ガシャァァァンッ


・・・転んだな。


「全く、貴方と言う方は・・・」

「うぅー、ゴメンなさいーっ」

「別にいいよ。あぁ、《死神》。アリガトウ」

「いえ、我が主がした不始末ですから」

「うぅーっ」


頭をさすりながら起きるソラに、僕は少しだけ笑って、本を棚にしまっていく。


「・・・楽しそうですね」

「・・・あぁ、しばらくこんな常連は来なかったからね」

「そうなのですか?」

「うん。十年間ずっと1人だった」

「・・・」

「そんな苦い顔しないでよ。寂しかったけど、今は楽しい」


一冊だけ本を抜き取って、僕は椅子に座る。
本を開いて、歌うように僕は言葉を口にした。
コトバは館内に響く。
羅列のように空中に、泡のように広がっていく言葉に、ソラは眼を輝かせた。


「《世界の図書館》の館長のみが使える《言霊》ですか」

「うん。綺麗でしょ?」


空中に浮く、泡の様な色とりどりの言葉を見ながら、僕は言った。