複雑・ファジー小説

Re: —Book on happiness— ( No.5 )
日時: 2011/08/18 11:33
名前: サポロ (ID: T3.YXFX2)

「天界人を治したのですか?」


怪訝そうに聞く《死神》に、僕は頷いた。


「元々他種族とはあまり関わらない、僕達はそんな種族だからね」
「うっわぁー!《天界人》初めて見たッ!」
「ソラも興味を示したし、別にいいでしょ?図書館で本を読むくらい。それに、僕が館長だ」
「・・・」


少し不満気味な《死神》に、僕は紅茶を差し出した。
黙ってソレを受け取ると、少し口に含んでいる。


「・・・元々《機械人》は好奇心旺盛ですから」
「まぁね」


僕は黄色い本を一冊取り出して、歌う。
粒子が泡のように空中に舞った。


「・・・これが言霊」
「まぁ、僕の弱い力じゃせいぜいこうやって、粒子みたいに飛ばすので精一杯なんだけどね」


強い力の持ち主なら、粒子をより多く飛ばす事ができたり、具現化したり、色んなことができるんだけど。
言霊をしばらくジッと見つめる少年。


「そういえば君の名前、聞いてなかった。君の名前は?」
「・・・エリアス。・・・お前、さっき弱い力って言ったよな。お前の力は弱いんじゃない」
「?」
「お前自身が力の使い方を良く判っていないからだ。お前の言霊は不協和音だ」


そういえば、変な音がする。
耳を済ませて僕は聞く。
言霊はそれぞれ音がある。
音は《精霊》が共鳴して奏でる物だ。
けど、《精霊》がかなで切れないほど強力だと鈍い音がする。


「・・・」
「まぁ、俺も《図書館館員》じゃないから良く判らないけどな」




———ポーンッ




一度、二度、澄んだ音がなった後で音の共鳴は崩れて行った。


「・・・そろそろ帰ろうと思う。じゃあな」
「あぁ、これも持っていくといい」
僕は一粒だけ、ビンの中から黄色い飴玉を取り出して彼に渡す。
「これは?」
「《ココロの飴玉》。《菓子屋》で買ってきてもらったうちの一粒だよ」
「・・・」


エリアスはツバサを羽ばたかせ、空を見上げた。


「・・・また、来てもいいか?」
「勿論だ。《世界の図書館》は全てを祝福するから」


エリアスは少しだけ笑って、翼をはためかせた。


「世界ッ!私にもソレ頂戴ッ」
「ハイハイ」
「主、もう少しわきまえてください」
「いいじゃんー」




僕はフッと、床を見た。

床に、一枚の白い羽根が落ちていた。

僕は拾い、ソレを本の間に挟んだ。