複雑・ファジー小説
- Re: カンテラノマホウツカイ ( No.6 )
- 日時: 2011/08/19 21:14
- 名前: サポロ (ID: T3.YXFX2)
◆
冷たい光。
人口の光は人々の心までも冷たくしてしまった。
この寒い空気の中を、何時も人はマントを覆って歩く。
《灯し屋》は、人口の光ではなく自然の火を灯す仕事だ。
同時に、人のココロを護る者でもある。
人の心を暖め、光を灯す。
ソレが、《灯し屋》の本来の仕事だ。
◆
「ホラ。これでいつでも暖かいよ」
「アリガトウおにいちゃん!」
この間の少年は俺にお礼を言って、俺が上げたランプを嬉しそうに眺めた。
父さんほどではないけど、俺もランプを作ることが出来る。
ランプに俺が使える《永遠に消えない炎》を灯す。
その炎はランプの持ち主のココロを暖めてくれる物だ。
ランプからは淡いオレンジ色の粒子が飛び散っていた。
「本当にこれ、消えないの?」
「うん。水をかけても消えないよ。でも、ランプが壊れると消えちゃうんだ。壊れた時は俺の家にきなよ。直してあげる」
「うんっ」
ランプの光を嬉しそうに見る少年に、俺は昔の自分を重ねる。
(俺も昔は良く父さんのランプを見てたな・・・)
父さんは《灯し屋》であったと同時に、ランプ職人だった。
父さんの最高傑作とも言えるランプが、俺の持つ《カンテラ》だった。
この《カンテラ》は父さんが最後に作った最後のランプ。
一生壊れることは無く、《魔法の光》を灯すことができるランプだ。
コノ世界に、二つと無いが。
父さんは、もう一個、最後にランプを作った。
そのランプは、父さんが、殺された、時。
一緒に、奪われた。
「・・・」
あの時何が起きたか、俺ははっきり憶えていない。
憶えているのは、父さんが俺を護ってくれた事と、《カンテラ》を渡した事。
———あの時、父さんを殺したのは誰なのか。今、もう一個のランプは誰の物なのか。
(・・・父さん)
「ねぇ、お兄ちゃん」
「?」
「俺、お兄ちゃんみたいな《灯し屋》になるっ!だってお兄ちゃん、格好いいんだもん」
そういって笑う少年に、俺も少しだけ笑った。
「そっか。頑張れ」
「うんっ」
ランプを握り締め、俺を期待の眼差しで見る少年。
俺は、少年の頭を撫でた。
◆
———カランッ
男は振り向く。
その右手には、《ランプ》。
黒い炎が灯っていて、その《ランプ》からは黒い粒子が溢れていた。
「・・・」
《ランプ》が共鳴したように、一層強く輝きだす。
「・・・夜道無為」
《カンテラの魔法使い》。
《カンテラの所持者》。
《炎を護る者》。
「・・・」
「やっと見つけたぜ?《ランプ》」
ソコに現れたもう一人の赤い少年———。
正確には、赤い服装をした少年。
髪は真っ赤に燃える真紅。
瞳も赤く、マントとその下のスーツも真っ赤だった。
「お前を、逮捕する」
少年は笑い、ランプを持った少年は無表情のまま振り向いた。