複雑・ファジー小説

Re: カンテラノマホウツカイ ( No.8 )
日時: 2011/08/20 10:21
名前: サポロ (ID: T3.YXFX2)

「貴方を保護します。夜道無為———カンテラの魔法使い」


何故こうなったのか。
誰か現状を説明してくれ。






《第二話》—ランプ—






《アウローラ魔法騎士団》。


彼らは政府の為に戦い、国の為に戦う。
《アウローラ》は暁の女神の名。
夜の女神、《ニュクス》に対抗するための名称である。









「連続、殺人?」


新聞の記事を見て俺は首をかしげる。
この街にしては珍しい事件ではあった。
この街は至って平和なはずだ。
《人口の光を灯す街》ならまだしも———。


「・・・」


何故か俺はその記事に釘付けになっていた。


(何だろう。この親近感、は)


首をかしげ、俺は《カンテラ》を持つ。
何時もどおり、ブーツを履いてマントを羽織って街に出る。
風が横を通り過ぎていった。


「・・・?」


不穏な風だった。
嫌な感覚の風。

———変な感じがする。

《カンテラ》の炎が不規則に動いているし、今日は不吉な日だ。


「無為、はよっす」
「あ、おはよ。錬」


俺に挨拶をしてきたのは幼馴染の《魔法使い》、興亜 錬(こうあ れん)。
《灯し屋》ではないが、《魔法》を使える。


「どうした?」


俺が何か変な仕草をしていたらしく、錬が聞き返してきた。
俺は黙り込む。


「・・・わからない」
「判らないのに悩んでるのか?」
「・・・うん」
「そんなんで悩むなよ。俺みたいに楽に生きようぜ?」


《カンテラ》がカランッと音を鳴らした。

———ボァッ


「うぉっ!!?」
「ッ!!」


いきなり《カンテラ》の火が燃え出して俺は急いで炎を鎮める。
やっぱり何か変だ。
火が、炎が《カンテラ》に収めつけられないなんて事、今までなかった。


「っぶねぇ・・・!」
「ご、ゴメン。大丈夫?」
「な、何とか、な。服、袖焦げちまったけど」


俺は急いで《カンテラ》を目の前まで掲げた。

———と。



————ズガァァァァンッ



「無為!」
「!!?」


後ろから爆発音が聞こえて俺は振り向く。


———ドスゥッ



「ぐへっ!?」



俺の上に何かが跳んできた。
見ると《ソレ》は、人だった。


「え!?」
「大丈夫かッ!?」
「っていうかこの人は!?息、してるっ!?」
「あぁ、息はしてるな—————ッ!?!無為!!」


———グァッ


「だぁッ!??」


———ガキャァァァァンッ




鈍い音が俺の前で鳴り響いた。
《カンテラ》を間一髪目の前に掲げ、《魔法》を発動した。
俺の目の前に現れた《盾》は一瞬にして炎になって溶けたように粒子となって消えた。


「————!」


そして、俺は目を見開く。
目の前に居る少年が持っている、《ソレ》。


「————お前、その《ランプ》をドコで手に入れたッ!!」
「   」


男と想われる目の前の人物は、無言のまま立ち上がる。
マントとフードで顔は見えない。
《ランプ》からは、黒い粒子があふれ出している。




「夜道無為」




男が喋った。






「お前のその《カンテラ》をいただく」




———ダンッ






男は跳躍した。