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錬「隆樹…？隆樹？」

おれには、今目の前にあることが理解出来なかった。

さらに近づくと、視界の中に隆樹がはっきりと写った。
傘はもう、手には持っていなかった。
電柱に強くぶつけたのか、頭からは血が出ていた。



錬「うそ……………だろ………？」


おれはそのとき、黙って見つめていることしか出来なかった。
顔をふつうに戻そうとしたが、頭の中はパニックになっている。
少し落ち着くと、おれは隆樹の方へ歩きだした。
まるで夢遊病の人のように、遅く、ふらふらと、慎重に歩いていた。
もう、雨や風のことなんか、まるっきり気にはしていない。

電柱のすぐそばに着くと、隆樹の首に手を伸ばした。
まず、生きているかどうかを調べようとしていた。


突然、お腹のあたりに変な衝撃が走るまでは。


錬「っぐ………！！？」

その衝撃が走った瞬間におれはとばされ、壁に思いっきりぶつかった。

あの時…突風のような強い風が来た。
誰かになぐられたような感覚もあった。
間違いない。おれはなぐられたんだ。お腹をそして強く。

その後、お腹を中心に鋭い痛みを感じた。
壁にぶつかり、その痛みはさらに増した。
頭を強く打ったせいか、意識がもうろうとしている。

—数秒後、おれは意識を手放した。
手放す直前、薄れていく意識の中で、ふと、こんなことを思った。




…もしかして…隆樹は…誰かに…………？