複雑・ファジー小説

Re: 【第十六論】◆鬼退師付き海賊銃乱戦風◆【完成】 ( No.115 )
日時: 2011/09/13 17:43
名前: 王翔 ◆OcuOW7W2IM (ID: KgUc9iRG)

第十七論




 
 鮮やかな青と白のグラデーションを映す空の下、明るい太陽の光がじりじりと床を焦がしてしまいそうなほど照り付けていた。
 大海原に浮かぶ船の甲板で、アヤメは青色の狩衣を羽織って舞いを披露していた。
 普通の者には、到底真似できないであろう俊敏な動き。
 舞いが終わると、リオが海に仕掛けていた網を引き上げる。

「おお……」

 網には、大量の魚や米などがかかっていた。その量は、役三週間分の食料に相当する。
 普段なら、こんなに取れることはなく、せいぜい三日分がいいところだった。
 リオが目を輝かせながらアヤメに顔を向ける。

「白狛子ってすごいんだな」
「はい。すごいですよ」

 にっこりと答えるアヤメ。
 
「これだけあれば、十分だな」
「そうですか? これで足りるんですか?」
「いや、十分過ぎるだろ? アヤメの周りには、一体どんな大食いがいたんだ?」
「十三人程度いました」
「真面目に返事が返ってきた!? それに、十三人もいるのか!?」

 アヤメは、網にかかった食料を大きな籠に詰めていく。
 全て詰め終わると、リオに質問する。

「で、どうするんですか? 料理の方は……」
「そこなんだが……、私は鮭の塩焼きしか作れないからな」
「え? 何で鮭の塩焼きなんですか? それが作れるなら、他の魚料理がいくつか作れても……」
「作れるわけないだろ!」
「……普通の焼き魚とかは」
「あんな難しいの作れるわけないだろ!? 鮭の塩焼きしか無理だ」
「おかしくないですか!? 魚を焼くだけですよ!? むしろ味付けする鮭の塩焼きの方が難しいはずですが? もしかして、ボケてるんですか? 突っ込み待ちですか!?」
「誰がボケだぁ! この私がふざけるわけないだろっ!」
「そうですか……」

 正直、納得がいかなかったがこれ以上何を言っても無駄そうなので、アヤメはため息をつく。





                   ◆





 船は、大都市がある大陸近くまで進んできていた。
 
「あの、次は何をしようとしているのでしょうか?」

 アリアが不思議そうに問いかける。
 それに対して、リオが答える。

「もちろん、宝探しだ」
「宝探しですか。小さな頃を思い出して、微笑ましいです」

 きれいな笑顔を浮かべて、グラスに入った水を飲むアリア。
 そんなアリアの言葉に、リオはむすっとする。

「いや、宝探しは……遊びではなく、本業なんだが」
「あ、そうなんですか。申し訳ありません。てっきり、子供の遊びかと……」
「…………」
「アリア」

 星乱が、鮭の塩焼きを口に運びつつ、片手を上げる。
 不思議そうにアリアは、首をかしげる。

「何でしょうか?」
「リオが泣きそうだー」
「え? あ、申し訳ありません。決して、リオさんを子供だとは……」
「おい、話してるところ悪いが……」

 いつの間にか、テーブルの前にティヴルが立っていた。
 
「どうしたー?」
「結構、天気が荒れてるみたいだぜ。甲板に置いてあった道具なんかは引っ込めなくて大丈夫なのか?」
「あ」






              ◆



 甲板に出ると、強い風が吹き荒れ、広大な海はいつもより高く波打っていた。
 
「……さっさと引っ込めるか。風が強いから、海に放り出されないように気をつけろよ!」

 そう言って、リオは籠を持ち上げる。
 
「うむ? 吹っ飛ばされ……」
 
 星乱がそう呟いた瞬間、風がさらに強く吹きつけ、吹っ飛ばされて海に落ちる。

「……えーと、リオちゃん」

 アッシュが恐る恐る口を開く。

「何だ……?」
「星乱くん、落ちちゃったけど……」
「はあ!? 本気か!? だから、気をつけろって言っただろうがあああ! 何だアイツ、バカなのか!? バカなのかあ!」
「あの……怒ってる場合ではないと思うんですが……。救助が先かと……」

 確かにアリアの言う通りだった。
 このまま放っておくのはまずいだろう。どうにか引き上げるしかないのだが、その方法というのが思い浮かばない。
 この天気では、ロープを投げて捕まってもらおうにも、風が強いものだから思う方向には飛ばないだろう。
 
「くそ! 私が行って来る! 引っ張ってくればいいんだろ!?」
「え? リオちゃんって確か……」

 アッシュが何か言いかけたが、その言葉を聞くことなくリオは飛び降りる。
 
「…………」
「あの……沈んでいってる気がするんですが……」
「私も思います……」

 アリアとアヤメが、複雑そうに呟く。

「リオちゃんって、カナヅチだった気がするんだよ」

 ポツリと、アッシュが呟く。
 その言葉を聞き、二人はオロオロし始める。






後半へ続く。
まさかの文字数オーバーで入りませんでした……。