複雑・ファジー小説

Re: 【第十七論前半】◆鬼退師付き海賊銃乱戦風◆【完成】 ( No.120 )
日時: 2011/09/14 12:17
名前: 王翔 ◆OcuOW7W2IM (ID: X7Da.dhQ)

「あ、あの……、それって、救助どころか犠牲者が増えるだけじゃないですか!」
「うーん……どうしよう……? 何か役に立つ魔法ないかな?」
「……つくづく思うけど、あの船長ってバカなんだな」

 ティヴルがなぜか関心した様子で呟く。
 それに対して、アリアは。

「船長! 死んだ人のことを悪く言うなんてどうかしてますよ!」
「いや、あのね……。まだ死んでないと思うんだけど……」
「……とりあえず、お経でも」

 アヤメが哀しそうな表情でお経を取り出した。
 
「もう死亡決定なの!?」
「とりあえず、浮き輪でも投げてみるか」
「だから、この天気では……」
「重りをつければ、ちゃんとした方向に飛ぶだろ」
「それは、そうかもだけど沈んじゃうからね!?」

 浮き輪作戦を提案するティヴルに対し、アッシュが全力で突っ込む。
 ボケと突っ込みをかましている場合ではないのだが……。

「そもそも、船に乗る奴らが何で、こういう時の救助法を考えてないんだ!?」
「君もだよね!?」
「あの……本格的にそろそろまずい気がするんですが……」
「漫才をしてる暇があったら、さっさと引っ張ってくれないかー?」

 四人が振り向くと、ぶるぶる震えるリオを抱えて船の端に捕まっている不機嫌そうな星乱の姿があった。

「わっ! 無事で良かった」

 アッシュが急いで引き上げる。
 
「ところで、リオ」
「……何だ?」
「カナヅチなのに、飛び降りるのはどうかと……」
「う、うるっさい! 助けてやろうとしたんだよバカ猫!」
「泳げる者に頼めば、良かったのではないか?」
「……その発想はなかった。逆転の発想ってやつか……」
「え? リオちゃん、その発想は普通だよ。逆転でも何でもないよ?」
「……分かってたけどな。ちょっとふざけただけだ」
「え? リオさん、この私がふざけるわけないだろ、とか言ってたような」
「…………」

 黙り込むリオ。
 星乱は、ぼーっとした表情のまま口を開く。

「まあ、礼を言うぞ」
「あ、ああ……」
「ところで、かなり恐がっていたようだが……」
「恐がってなんかない!」

 リオがそう言った瞬間、船が大きく揺れる。

「……っ!」

 リオは、ぎゅっと星乱にしがみつく。

「リオ、もう中に戻るから離れてほしいんだがー……」
「や……離れるなあ! 落ちたらどうしてくれるんだよお……」
「誰かこの、ビビリ甘えん坊をどうにかしてくれー」
「やだ……離れるなよバカあ!」
「海に放り出せばいいんじゃないか?」
「ティヴル! お前、覚えてろ! 後で仕返しするからな!」
「ところで、リオ……胸……というか、肋骨が当たって痛いんだがー……」

 それを聞いた瞬間、リオは顔を真っ赤にする。

「うわあああああ! ど、どうしてくれるんだよお……。婿に行けないだろうが!」
「あの……リオさん、女の子は婿にはなれませんよ? 嫁の間違いでは……」
「…………」






               ◆



「セラああああ!」
「ひええ!?」

 セラの部屋のドアを思い切り、蹴り吹っ飛ばした。

「な、な……何ですか?」

 びくびく震えながらセラが恐る恐る尋ねる。
 リオは、ベッドに潜り込んで黙り込む。

「ちょっ……人のベッドに引きこもらないでください! 私が言えることじゃないですけど……。ほ、ホントに私のベッド返してください! せ、星乱さーん! この人、持って行ってくださいー!」
「バカ! 変なの呼ぶんじゃない!」