複雑・ファジー小説

Re: 【第十七論後半】◆鬼退師付き海賊銃乱戦風◆【完成!】 ( No.128 )
日時: 2011/09/15 19:26
名前: 王翔 ◆OcuOW7W2IM (ID: sz87LS1t)

第十八論





 見とれてしまうほど青くきれいな空の下、多くの人々で賑わう大都市が存在した。
 観光客から旅人まで、幅広い層の人々がひしめき合っていた。
 
「人が多すぎて鬱陶しいな」

 不機嫌そうにリオは呟く。
 その様子を見て、アリアが困ったような表情をする。

「リオさん、鬱陶しいなんて言ってはダメです。皆さん、目的があってこの町にいるわけなんですし……」
「確かにそうだが……」
「家がなくて、道ばたで生活している人もいます。病気の子供を抱えて日々重労働に励む親もいます。家計を助けるために、必死に花を売る健気な子供もいます」
「し、シリアスすぎる説明はやめてくれないか!?」

 そんなことを聞くと、鬱陶しいと言ってしまった罪悪感がすごい勢いで襲ってくる。
 リオは、少しオロオロした様子で星乱に向き直る。

「で、ここに何の用なんだ? 早く宝探しに行きたいんだから、さっさと済ませろよバカ猫」
「ふむー」

 この町に来ると言い出したのは、星乱だった。
 何か用があるらしいのだが、いまだに何の用なのかは聞いていない。
 星乱は、相変わらず間延びした口調で答える。

「妹がいてなー」
「妹? お前、一体何人兄弟なんだ?」
「秘密だー」
「…………」

 リオは、星乱の妹というのがどういう人物なのか気になった。この星乱の妹ならば、ぼーっとしているのか……おしとやかなのか……。
 
「星乱さんの妹さんですか〜。どんな方なのか気になります」

 珍しく部屋から出て来て、船に残ることなくついて来たセラがそわそわしながら呟く。
 代わりにアッシュが留守番中だったりする。
 セラは、こそこそとアリアの後ろに隠れたり、アヤメの後ろに隠れたりしながらおどおどした様子で歩いている。
 その様子にリオは、しびれを切らし、セラの兎耳を思い切り引っ張った。

「おどおどするんじゃないっ! はきはき歩けビビリがーーーーーーー!」
「いやああああ!? やめてください。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさフゴッ!?」
「大声出すなこのバカっ!」
「……リオさん、せ、セラさんが死んじゃいますよ!?」

 アヤメに止められ、リオはようやくセラを叩いたり怒鳴ったりするのをやめた。
 セラは、ほっとして胸を撫で下ろす。
 
「腹が減ったなー……」

 星乱が呟くと、リオがポケットを漁り、小さな包みを取り出した。

「それは……?」
「きび団子だ」
「なぜ、そんなものをー?」
「大抵の奴は、これで釣れるからな」
「あの……リオさん、団子ぐらいで釣られる人はあまりいませんよ?」
「釣れる」
「いえ、ですから……」
「何だ?」
「何でもありません」

 もう何を言っても無駄だと思ったのか、アリアは沈黙する。
 星乱はとりあえず、きび団子を一つ取り、口に運ぶ。

「ところで、妹というのは何をしてるんだ?」

 星乱は口のなかの団子をごくっと飲み込むと、ぼーっとしたまま答える。
 
「それなんだがなー……、確か聖騎士隊だったかー?」
「いや、私に聞くなよ。お前の妹なんだろ?」

 ふと、何かが猛スピードで横切った。
 反射的にリオ達は振り向く。
 
「……なんでしょうか?」
「ちょっとどいてくれる?」

 一人の少女がいた。
 低めの背に腰まで垂らした赤髪に紫の瞳。狼の耳と尻尾を生やし、背には黒い羽まで生えている。
 見たことのないタイプだった。

「……人狼? 魔人? どっちだ」

 リオがいぶかしげに呟くが、少女は質問に答えることなく。

「私は、坊や達に構ってる暇はないの。じゃあ」

 そう言い残し、風のような速さで去って行った。
 むすっとしたリオ。
 アヤメが心配そうにリオの顔を覗き込む。

「どうしましたか?」
「……私は、坊やじゃないっ!」
「……そう、ですね……」
「何だその曖昧な反応はっ! このバカぁ!」