複雑・ファジー小説

Re: 【第十九論】◆鬼退師付き海賊銃乱戦風◆【参照700】 ( No.144 )
日時: 2011/09/16 15:47
名前: 王翔 ◆OcuOW7W2IM (ID: oq/GQDEH)

第二十論



「お兄!?」

 少女は、驚いたような顔で確かにそう言った。
 リオ達は、思わず固まった。
 星乱の言っていた妹とは、この少女なのだろうか。正直なところ、全く似ていない。先程の様子を思い出しても普段ぼーっとしている星乱の様子とはまるでかけ離れていて、兄弟だと言う方が信じられない。
 
「久しぶりだなー、麗乱」
「お久ですっ!」

 麗乱は、姿勢を正して敬礼のポーズを取る。その様子だけ見ても、真面目なのだと分かる。兄弟に対して敬礼というのは、少々真面目すぎる気がしないでもないが。
 リオが不思議そうに星乱に問いかける。

「こいつ、お前の妹なのか?」
「うむー」
「はじめましてっ! 私、麗乱と申します!」
「は、はじめまして……。私は、リオだ」

 麗乱の雰囲気に、弱冠リオが気圧されているのが見て取れる。
 
「私は、アリアと申します」
「私は、アヤメ……」
「セラですー」
 
 それぞれ自己紹介をし、頭を下げる。
 
「お兄、この方達は……」
「仲間だー」
「なるほど! 仲間ですか! 皆さん、私は……この町で聖守をやっております!」
「聖守……?」

 リオが首を傾げる。

「リオさん、聖守というのは、町や村の秩序を守るために悪人を検挙する人達ですよ」
「そうなのか……」

 アリアに聞き、リオは頷く。
 
「小さい子でも分かるように言うと、悪い人をやっつけてくれる正義の味方です」
「そんな説明されなくても分かったからな!? 私の知能レベルを低評価しすぎじゃないか!?」
「申し訳ありません……。反応が薄かったので」
「…………」
「あの、皆さん聖守所に来ませんか! いろいろお話したいこともありますし。あ、もちろん補導じゃないですよ」




           
                    ◆



 聖守所の前まで来て、麗乱が立ち止まる。
 ドアの前に、ガラの悪い大男がいた。

「壊した店の修理代だと!? そんなもん払うわけがないだろが!」

 大声を上げ、ドアを勢い良く入って行く男。

「あの……あれ、大丈夫なんですかね?」
「大丈夫ですよ! あんなのよく来ますから、みんな対応には慣れてます!」

 おずおずと尋ねるアヤメに対し、麗乱は自身満々に答える。
 聖守所のなかから、大きな音が響いてくる。何かで人を叩いたりした時に聞こえそうな音が繰り返し聞こえる。

「おい、大丈夫なのか!? まずいんじゃないか!?」
「大丈夫ですよ!」

 しばらくたって、先程の男が出て来た──血まみれで。頭から赤い液体が流れており、先程とは打って変わって怯えているような表情でよろよろと歩く。

「金は……払います……。ですから……命だけは……!」

 全力で逃げて行ってしまった。

「何があった!?」

 ドアが開き、一人の少年が出て来た。スポーツ刈りの頭、白いワイシャツにピアス……そして、手には血のついた金属バット。
 少年は、笑顔を浮かべる。

「おお、お客さんっすか? それとも事情聴取ですか?」
「…………」
「どうしたんすか? みんな黙ってますけど……」
「あの……」

 アリアが恐る恐る口を開く。

「その、バットは……」
「ああ、これですか? 俺、おっちょこちょいなんでケチャップをこぼしてしまったんすよ。後で拭かないと」
「何をどうやったら、金属バットにケチャップがこぼれるんだ!? ケチャップの割りにはやけに鉄っぽい臭いがするんだが!?」

 リオの指摘に対し、少年は笑顔を崩さぬまま、

「いやあ、このバット金属ですから」
「今、血まみれの男が逃げて行ったが……」
「ケチャップがかかってしまったんすよ。どうやら、よっぽどケキャップが苦手みたいすね」
「…………」

 もう何を言おうが、うまく返されると分かったので誰もそれ以上追及しなかった。
 
「よく見ると可愛い女の子がたくさん……」
「…………」






                      ◆



「お兄がこの町に来て、ちょうど良かったです!」

 武器が大量に置かれた、応接間の中央に配置されたテーブルに熱々のお茶を並べつつ麗乱がどこか安心したような表情で言う。
 星乱は首を傾げる。

「どういうことだー?」
「最近、鬼がよく出るんですよ! それはもう、毎日のように。正直なところ、対応しきれてないんですよ。どうかお兄に協力をお願いしたく!」
「うー……」
「やってやればいいだろ」
「ふむ」

 リオの言葉に星乱は頷く。
 そして、複雑そうに呟く。

「しかし……留まることなく、出現しつづけるというのは……何らかの根源があるんだなー? それを叩けば……」
「鬼の根源って何ですか?」

 アヤメが不思議そうに尋ねる。

「鬼の根源は、大半が魂の管理者……」
「魂の管理者?」
「うむ。魂を管理するものなんだが……、死んだ者の魂をきちんとあの世へ案内せず、鬼にしてしまう者も多い」
「そんな者が……」
「あら? お客さん?」

 奥から出て来たのは、先程の赤い髪、狼の耳と尻尾、黒い羽を生やした少女だった。

「あ、こいつ!」

 真っ先に反応したのは、当然の如くリオだった。