複雑・ファジー小説
- Re: 【イラストup!】◆鬼退師付き海賊銃乱戦風◆【参照800】 ( No.164 )
- 日時: 2011/09/18 16:25
- 名前: 王翔 ◆OcuOW7W2IM (ID: xIgQLs8g)
- 参照: http://ameblo.jp/686-7777/image-11020580324-11488409740.html
第二十二論
空が漆黒の闇に包まれ、月の光がいっそう際立つ夜であった。
聖守所に泊めてもらうことになったリオ達は、客人用の部屋にいた。こぎれいで、必要最低限の物しかない。
旅館やホテルではないのだから、期待するだけ無駄というものだが、クローゼットすらないのは少々不満だった。
テーブル前の椅子に腰を降ろしていたリオは、周囲をぐるりと見回した。
既にベッドに潜り、寝息をたてているセラ。
向かい側の椅子に腰掛け、真剣に本のページを捲るアリア。
ソファでクッションを抱えて、うとうとしているアヤメ。
どうにも、話し相手になりそうな者はいない。
アヤメは眠そうであるし、アリアは本に夢中で邪魔をするのは悪い。セラに至っては論外だ。
ため息をつくと、立ち上がる。
「あら? どこへ行くのですか?」
アリアが顔を上げ、不思議そうに問いかけてくる。
ドアノブに手をかけつつ、振り返らずに答えた。
「散歩でもして来る」
そう言い残し、ドアノブを回し、部屋を出た。
廊下は、暗く視界が悪かった。外より暗いのではないかというほどである。
「どこへ行くのかしら?」
ふと、声が聞こえ、リオは振り向いた。
その場に立っていたのは、リズだった。
「外だ」
「そう……。でも、あんまり外には出ない方がいいかもしれないわ」
「何で?」
「夜は、鬼がよく出るから。あなた、鬼が苦手なんでしょう? 何となく分かる」
「はあ!? 鬼ぐらいで恐がるわけないだろ!?」
「じゃあ、外に出るの?」
「ああ」
「そう……。泣きながら帰って来ないようにね?」
「…………」
◆
黒いキャンパスに、ダイヤモンドを散りばめたかのように、数え切れないほどの星が煌いていた。たった一つだけ、淡く輝き暗くなった地上を月が照らしていた。
冷たい空気を纏った夜風が頬を撫でる。
聖守所から離れたところに小さめの森があった。
月の淡い光が葉を輝かせ、うっそうと生い茂る木々が夜だというのに輝いて見える。至るところから虫の鳴き声がひっきりなしに響いてくる。
がさ、と音が響く。目の前に、二匹の喰い人が現れる。
緑色のドロドロした、人が溶けかけてるような姿であり、不気味だった。
「……ったく! 面倒だ」
リオは、アサルトライフルを構え、《魔法》の《火吹き放射》をタッチする。
赤い文字列に囲まれたアサルトライフルの引き金を勢い良く引いた。
大きな轟音が響き渡り、紅蓮の炎が喰い人を包み込み、その体を焼き尽くす。休むことなく、リオは《焼去》をタッチして再びアサルトライフルの引き金を引く。
漆黒の炎が喰い人に襲いかかり、ガラスを割り裂くような破壊音が響き、喰い人は粉々に砕け散る。
「うふふ、強いのねぇ」
背後から聞こえた声に反応し、振り向く。
鬼を引き連れた少女がいた。
自然を連想させる緑色の長い髪を腰まで垂らし、青碧の瞳……血のように赤い煌びやかなドレスを纏っている。
鬼を引き連れているのを見ると、星乱が言っていた魂の管理者で間違いないだろう。
リオは、鬼を倒すことはできないが、魂の管理者は鬼ではない。
彼女にアサルトライフルを向ける。
「よく気づいたじゃない? そう、私を殺せば鬼達も消えるのよ。でもね……」
少女は、可笑しそうに腹を抱えて笑い、さっと両手を上げる。彼女を輝く赤色の光が包み込み、その姿を変貌させる。
輝く黄金色の長い髪、白いワンピース……その姿は、まさしく向日葵の少女であった。
「……!」
リオの顔が青ざめる。
「この姿の私を、殺すことができるぅ? できないでしょう?」
「あ、姉上……」
少女は、歪んだ笑みを浮かべる。
「あなたのお姉さんの思ってること、代弁してあげる」