複雑・ファジー小説

Re: ◆鬼退師付き海賊銃乱戦風◆【参照100】 ( No.19 )
日時: 2011/09/07 14:49
名前: 王翔 ◆OcuOW7W2IM (ID: 58y6MThT)

第五論




 朝、窓から差し込む陽光を浴びてほんの少し、白く濁った空気が漂うなか、船員室中央の木製で質素なテーブルを囲んで朝食をとっていたのだが、もくもくとパンを口に運ぶ星乱とアッシュに対し、リオは明らかに不機嫌そうな表情で肘をついていた。
 
「くそっ!」

 いきなりテーブルを思い切り、叩いてリオが立ち上がる。
 テーブルに並べられた皿が大きく揺れる。

「どうしたんだ?」

 怪訝そうに星乱が質問を投げかけると、今だに不機嫌そうにしながら答える。
 
「一人、引きこもりがいるからな。全く、アイツはいつになったら出てくるんだ!」
「ふむ……、まだ船員がいるのか」
「ああ、引きこもりで滅多に出て来ない。くそ、ムカつくから引っ張り出して来る」

 リオはそう言い残すと、早々に部屋を出て行った。

「あーあ、困ったね」
「問題あるのか?」

 不思議そうに首を傾げる星乱に対し、アッシュは苦笑いした。

「うん、リオちゃんって強行手段に走っちゃうから。星乱くん、止めて来てくれる?」
「なぜ俺が、そのようなことを……」
「お願いだから、ね?」

 アッシュは、にこっと可愛らしい笑顔で両手を合わせる。その辺の女の子より数倍は可愛いだろう。
 普通の男なら、こんな風に頼まれることがあれば断れないかもしれない。
 星乱は、少し不満そうにしながらも渋々立ち上がった。
 




              ◆




「出てこい、セラ! この引きこもりがー!」

 リオは、大声で怒鳴るとドアを思い切り蹴る。
 大きな音が響き、ドアが壊れてしまうのではないかと思うほど振動する。
 
「いつまでそうしてる気だ、このバカ! 早く出て来い! それとも何だ? 海に放り出してやろうか!?」

 そんなリオの様子を見て、星乱は呆れたように一息。
 あれでは、出て来るものも出て来ないのでは、と思いリオに歩み寄った。

「リオ、やめ──」
「出て来い、コノヤロー!」

 バキっという木が盛大に突き破られる大音響が響き、ドアが外れた。
 リオが部屋のなかに入ったかと思うと、すぐに一人の少女を引きずって出て来た。
 ピンク色の長いおさげ髪に、パープルのような紫色の瞳、そして長い兎の耳を垂らした少女だった。
 少女は、あわあわと涙目でかぶりを振る。

「む、無理ですよー! 自分、喰い人とかダメなんです! あんなのと戦ったら死ぬんです!」
「死ぬわけないだろうが。引きこもりはやめろ! 海のもずくにしおてやろうか!?」
「それは、嫌ですー……」

 セラは諦めたらしく、おどおどした様子で立ち上がると、星乱に視線を向けて首を捻った。
 
「その方は?」
「鬼退師の星乱だ。新しく船員なった奴」
「そ、そうなんですか! 私の知らない間に……は、はじめまして。私、セラと申します! どうぞよろしくお願いしまひゅ……」
「おい、噛んでる」
「噛んでないです! 私は、もともとこういう喋り方なんです!」
「見苦しいぞ」
「うう……」
「まあ、よろしくなー」
「はい……」

 ションボリ肩を落とすセラに、何と声をかければいいのか迷った末、結局思いつかず星乱は黙ったまましばらく様子を伺った。
 セラの兎耳が垂れているのは、恐がりだからだろうか、と勝手に考える。案外、驚くとピーンと立つのかもしれない。
 沈黙状態が続いていたが、リオが沈黙を破る。

「そろそろ船を動かすか。嵐の島に財宝探しに行くぞ」
「ま、待ってくださいー! 嵐とか恐いです……」
「じゃあ、海に飛び降りろ」
「ふー!」

 セラは、ガクガク震え始めた。
 
「ほら、覚悟決めろ。もう行くからな」
「……えらい態度の違いだな。昨日は、あんなに甘えん坊だったのに……」
「星乱! それ以上、言うな! き、昨日のは……誤作動だ……。そう、誤作動……なんだ……」

 顔を真っ赤にしながら、呟くリオ。
 星乱は、怪訝そうに首を傾げる。

「リオ……、君は、何の機械なんだ?」
「黙れ! 突っ込みは必要ない! その話を引っ張り出すんじゃない!」
「むー」