複雑・ファジー小説

Re: 【第二十四論】◆鬼退師付き海賊銃乱戦風◆【参照1000】 ( No.196 )
日時: 2011/09/24 09:14
名前: 王翔 ◆OcuOW7W2IM (ID: UvBorD81)

第二十五論




 空中で飛散した青く煌く光は、流星の如く降り注ぐ。マリオットは、いち早く反応し、俊敏な動きで光を回避して疾走──赤い軌跡を描きながら剣を勢い良く振り下ろす。星乱はそれを杖で受け止めた。

「鬼退師って、確か接近戦は苦手だったんじゃない?」
「くっ……」

 マリオットが不適な笑みを浮かべ、勢い良く剣で星乱を振り払う。体勢を崩した星乱をたたみ掛けようと、さらに剣を振り上げる。しかし、その瞬間、赤く輝き龍の如く宙を駆け抜ける炎がマリオットの身体を貫く。
 
「なっ……!?」
「管理者さん、もしかして私の存在忘れてたの? 間抜けなものね」

 ライフルを構えたリズが、木の後ろから出て来て、おもしろそうに笑う。ライフルは、龍のようにうねる激しい炎を纏って赤く輝いていた。

「誰が間抜け……ですって?」
「あなたしかいないじゃない」
「この私に、そんなこと言ってただで済むと思ってるの?」
「ええ、思ってるわ」
「済むわけないじゃない! 切り刻んでやるわ」

 マリオットが手をかざすと、剣の赤い刀身が青に変化した。リズは興味深そうにそれを見つめ、首を傾げる。

「それ、何か違いがあるのかしら?」
「攻撃を受けて見れば分かるわよぅ?」

 不適に笑い、剣を天にかざすと、その刀身が青い炎を纏う。
 
「なるほど……、属性の変化と言ったところね? さっきまでは、赤い炎。今が青い炎。赤より青の炎の方は強力だと聞くし、本気を出したってところね? 生者ごときに」
「なかなか知識があるようね? まあ、いくら知識があったところで私には敵わないだろうけど」

 余裕の笑みを浮かべ、剣を一直線に振り下ろす。剣の先端から、電光の如く青い炎が迸る。リズはライフルの引き金を引き、赤い炎の壁を自身の前に出現させる。青い炎と赤い炎の壁はぶつかり合い、一瞬して消滅した。

「うー……、まだ決着はついてないのかー?」

 ようやく立ち上がったらしい星乱が呟く。

「あら? 生きてたの?」
「俺は、体勢を崩しただけなんだがなー……」
「なになに? まさか二人がかりで掛かってくるつもり? まあ、こっちにも考えがあるわ」

 マリオットは、剣を星乱でもリズでもなく、座り込んでいたリオに向けて青い炎を放った。

「……!?」

 咄嗟に星乱がリオを庇い、青い炎が星乱の背に直撃する。
 
「なっ……、おい!?」

 リオが星乱の身体を揺する。

「ちょっ……何で私なんか……死ぬなよバカぁ……」
「死んでは、いないのだが……」
「やだ……私を一人にするなよぉ……」
「死んでないと……」
「そろそろトドメを刺そうかしら?」

 楽しそうにマリオットが呟く。そして、剣を構える。
 しかし、マリオットが剣を振り下ろす前に、マリオットの胸を黄金色の炎が貫いた。

「なっ……!? 金……? どういう、ことよ……」

 マリオットの目に映ったのは、アサルトライフルを構えたリオだった。
 その場に、青い光が現れ、一人の少女が姿を現す。地面につくぐらい長い黒髪に、青色のドレス……。神々しい雰囲気を纏っていた。
 
「見つけた」
「は……?」

 リオとリズは、目をぱちくりさせる。

「ちょっと、ディーセント? あんた何?」

 マリオットが怪訝そうに尋ねる。その様子からして、二人は知り合いなのだろう。彼女も、管理者なのだろうか。ディーセントは、マリオットの質問には答えず、リオに目を向ける。

「あなたの力を貸してほしいの。あなたの大事な人を蘇らせることができる」
「大事な……?」

 リオが思い浮かべたのは、姉の姿だった。

「そう、あなたの力があれば、その人を蘇らせることができる。その黄金の炎があれば……。だから、来てくれない? できれば、連れ去るなんて真似はしたくない。悪者みたいだし……。自分から来てほしい」
「…………」

 姉上、を……?
 しかし、リオはかぶりを振った。蘇らせる、なんて都合のいい話があるわけがない。

「ダメだ……」
「そう……。仕方ないわね……」

 リオの足元に魔方陣のようなものが現れ、木の枝のようなものがリオの身体に絡みつく。

「うぁ……、な……何を……」
「了解してもらえないなら、仕方ないわ。蘇らせたら、帰してあげる」
「ふ……ふざけるな! 早く解け!」
「……させるか……」

 星乱が、よろよろと起き上がり、杖をかざす。ふっと魔法が解け、リオは地面に倒れこむ。

「あなた……私の魔法が解けるの?」

 ディーセントが問いかけたとき、リズがライフルの引き金を引き、無数の炎を放つ。マリオットとディーセントは姿を消した。

「リズ……と言ったか……。正直……聖守所まで、戻れる気がしない……。後は、助けでも呼んでくれると……」

 言い終わらない内に、星乱はその場に倒れた。
 リズはため息一つ。

「全く……二人揃って、仕方ないわね」