複雑・ファジー小説
- Re: ◆鬼退師付き海賊銃乱戦風◆【二十五、五論】 ( No.215 )
- 日時: 2011/09/30 16:30
- 名前: 王翔 ◆OcuOW7W2IM (ID: 4Ir7lKvg)
第二十六論
リオはふと、目を覚まして起き上がる。周囲を見回すと、簡素な部屋だった。窓越しに存在するのは青と白のグラデーション…………夜明けの色彩である。
難しい表情で首を捻った。
あれから…………どうなったんだ?
不意にドアが開き、姿を現したのはアリアだ。にこりと、やわらかな笑顔を浮かべる。
「目が覚めましたか?」
「あ、ああ……」
「昨日は大変でしたね。魂の管理者というのは随分お強いようですし…………」
「そうだな……。あれは、生者より高位の存在だって言うし。そんな存在が敵意を向けてくるって恐ろしいというか……」
「なぜ、敵意を向けてくるのか……。私は、単純に生者を苦しめたいのではない気もするのです」
「え……?」
アリアの言葉に、目をぱちくりさせる。生者を苦しめるため…………それ以外に敵意を向けてくる理由があるのだろうか。正直、リオには他の理由が思いつかない。けど、アリアはまた別の考えを持っている。
「魂の管理者は……死ぬことはない。なら──永遠に休むこともできないのではないですか? 生者はいずれ死にます。永遠に生きたいと思うかもしれませんが、永遠に生き続けるというのは、大変なことなんです。身体をずっと元気ですが……いつしか疲れてしまうんですよ。彼女達にも、そういう疲れがあるのではないですか?」
「でも……それと敵意を向けてくる理由は関係あるのか?」
「リオさんは、千人の魂を捧げれば、一人を蘇らせることができる、と聞いたことはありませんか? 千人殺して、その魂を神に捧げれば、一人を生き返らせることができます。生者にそれは難しいかもしれませんが……、鬼を作ることができる管理者にならできるかもしれません」
「…………?」
意味はよく分からず、首を捻る。
「これは、あくまで仮説ですが……管理者が人間を好きになったらどうでしょうか? 仮に恋が実ったとしても……人間はいずれ死んでしまう。けれど、自分は永遠に生き続けなければならない。それなら、相手を蘇らせようとするのでは? 千人を殺し、蘇らせ、その者が再度死んでしまったら、また千人を殺す。これを繰り返すとすれば…………」
「確かに……それは、あり得るかもしれない」
けれど、もしそうであったとしても解決する術は分からない。
ふと、昨日のディーセントの言葉を思い出した。
────あなたの大事な人を蘇らせられる。
自分の考える限り、姉しかいなかった。なら、あのディーセントは姉と親しかったのか……。
「…………」
「では、私は失礼します。無理をなさらないようにしてくださいね」
少しだけ、姉のことを思い出した。
◆
「リオちゃーん! 起きてますかー!?」
空が真っ暗になり、月が昇っている時間帯……布団に潜り込んで気持ち良く眠っていたというのに、玄関から大声が響いてくる。声の主の正体は分かったのであえて無視しても大丈夫だと反応しないことにしていた。
「リーーーーーーーーオーーーーーーーーーーーちゃーーーーーーーーーーーーん!」
鼓膜が破れそうなほどの大音量に流石に起き上がった。とりあえず、部屋を出て玄関へと向かう。玄関に立っている姉──リアリスに向って怒鳴った。
「うるさいっ! 人が寝てる時に大声だすなっ!」
「ごめんなさい。今日は紹介したい人がいまして……。えーと、こっちの……星乱って言って恋人なんですよー」
「え? え……?」
恋人と聞き、リオは挙動不審になる。正直、姉に恋人というのが信じられなかった。普段から子供っぽくて恋愛とかには興味なさそうだったというのに、いきなり……。その恋人である星乱はというと……寝ていた。人の家の玄関で。
「何でこんな変な奴なんだよぉっ!?」