複雑・ファジー小説

Re: 【■■■見ても慌てない】◆鬼退師付き海賊銃乱戦風◆【第八論】 ( No.42 )
日時: 2011/09/09 18:07
名前: 王翔 (ID: YdfeSjPd)

第九論



「ああ……もう最悪だ……」

 リオは、そう呟き、頭を抱える。
 その隣でさくさく歩き続ける星乱は、不思議そうに首を傾げる。
 
「なぜ、着替えを見られたぐらいで、最悪なんだ?」
「うるさい! 黙れ! お前は、理解力に乏しすぎじゃないか?」

 不機嫌そうに言い、リオはため息をつく。
 
「ま、まあ……、私は、その……スタイルも良くないし、見ても何とも思わないかもしれんが……」
「?」
「…………」

 背の高い邪魔な草を掻き分けつつ、前に進んで行く。
 しばらく進んで行くと、先ほどより大きな洞窟が姿を現した。
 中が暗いらしく、入り口の前からはっきりと様子を伺うことはできない。
 しばらく、凝視していたが、暗いので結局中に何があるのかは分からず、リオは気を引き締めると、口を開いた。

「怪しいな。よし、入るか」
「入るのかー? 気をつけて行って来い」

 星乱の、腕を掴むとリオは、思い切り引っ張る。
 
「お前も入るんだよ!」
「むー」

 洞窟に足を踏み入れると、夜になったのかと思うほど暗かった。
 気をつけなければ、大人でも転んでしまうことがあるかもしれない。

「…………」
「ところで、リオ」
「…………」
「聞きたいことが」
「…………」
「リオ?」
「…………」
「なぜ、そんなにしがみついてくるんだ? 歩きにくいんだが……」

 洞窟に足を踏み入れた瞬間から、星乱にリオがしがみついていた。
 なぜ、しがみついてるのか理由が思いつかない。
 
「……お前が……恐がってるだろうから……」
「君が恐がってるんだな? なら、来なければ良かっただろうに……」
「恐くない! 恐いのはお前だろ!? そう言って、自分が恐がってるのを誤魔化そうとしたって無駄だからな!?」
「そのセリフ、そっくりそのまま、君に返すー」
「だから、恐がってない!」

 そう言っているわりには、リオはブルブル震えていた。
 星乱は、相変わらずの口調で問う。

「何が、そんなに恐いんだ?」
「……いきなり、何か変なの出て来たら、恐いじゃないか……」
「なるほど……」

リオは、はっとして叫ぶ。

「今のは、嘘だからな!」
「この状況で嘘をつく理由はないと思うが……」
「と、とにかく嘘だからな!」
「むー……」
「あれだろ! お前、恐いんだろ!?」
「はあ……」

 星乱は、もう何を言っても無駄だと思い、ため息をついた。
 その様子を見て、リオはむっとした表情をする。

「な、何だ……、コイツといると疲れるみたいな感じは……」
「本当に疲れるんだが……」
「うるさい!」

 しばらく、進んで行くと、不意に明るくなった。
 洞窟の奥に辿り着いたのか、広い空間が広がり、行き止まりとなっていた。
 
「ここで、終わりか?」
「いきなり普通になったなー? もう明るいから恐くないのか?」
「だから、最初から恐くない!」

 言い合いをしていると、ふと足音が聞こえた。
 振り向くと、アッシュとセラがいた。

「あれ? 二人もここに来たの?」
「この洞窟……恐いです」
「ん? 何だ、同じに所に来るとは。まあ、ここからは一緒に行動するか」

 リオが呟いた時だった。
 大きな地響きが起こった。空気がびりびりと振動し、地面が揺れるのが分かる。

「何だ?」
「く、喰い人じゃないですかー! もう嫌です、逃げましょう!」

 巨大な、龍のような黒色の身体に、白い翼を生やし、金に輝く鱗を身体に纏う喰い人だった。
 滅多に見ないような、大きさである。

「あ、これ、ひょっとするかもしれないよ?」
「何だー?」

 アッシュは、緊張する様子もなく呟く。

「ここに、金の花があるかもしれないってこと。この喰い人、番人なんじゃないかな?」