複雑・ファジー小説

Re: 海賊と鬼退師と電子世界 ( No.5 )
日時: 2011/09/07 13:24
名前: 王翔 ◆OcuOW7W2IM (ID: T8uIPv/C)

第二論


「こら、何をしている……」

 いぶかしげに尋ねてくる青年に対し、リオは杖を返そうともせずに答える。

「助けてやったから、お礼をもらおうと思ってたんだが」
「そうか。だが、それはダメだ」
「何でだ!? 私が助けてやったんだぞ!」

 リオの態度は、到底人を助けたようには見えないものだった。
 
「仕方ない……」

 青年は、小さくため息をつくと首にぶら下げていた、海を連想させるような宝石の首飾りを外し、リオに差し出した。

「これで、勘弁してくれ……」
「分かった、少々納得がいかないが……」

 リオは、青年から首飾りを奪い取るとポケットへとしまい、杖を青年に押し付ける。
 どうにも納得いかなそうな表情を青年に向ける。

「ところで、何で漂流してたんだ?」
「俺は、鬼退師で……海鬼専門なんだが、船も持っていないわけで、泳ぎながら倒していこうと試みた……」
「はあ? お前バカか!? バカなのか!」
「むー」
「そんなの、溺れるに決まってるだろうが! いくら水泳が得意でも何十キロも泳ぎ続けて、その上鬼退治をするなんて無理に決まってる! どんだけバカなんだ!?」

 青年は、リオの話を聞いているのか、いないのか、ぼーっとしていた。
 
「ところで、名前は何て言うんですか?」
 
 リオを押しのけて、少年が笑顔で青年に尋ねる。
 
「俺は……、星乱だ」
「へー、僕はアッシュって言うんだよ」

 にこりと、ふわふわした感じの笑顔で言うアッシュに対し、星乱は不思議そうに小首を傾げ、

「女にしては、男らしい名前だな?」
「うん、僕は男だからね」
「男に生まれたかったのか。気の毒だな」
「いやね、僕、既に男だからね? 生まれた時から男なんだよ?」

 アッシュの外見は、まるで少女のようで、男だと思う者はなかなかいないだろう。
 この話題が続くのは、正直好ましくないと考えたアッシュは、リオのことを紹介する。

「こっちは、船長のリオだよ。こう見えても根はいい子なんだよ」
「いい子じゃないが? 今も喰い人を蹴散らしたいと思ってる」
「でも、リオは鬼が恐いんだよね?」
「恐くない!」
「あ、俺は鬼退師なんだが……」

 星乱の言葉に反応したリオは、星乱に顔を向ける。

「ど、どうしてもって言うなら、この船に乗せてやっといてもいいが?」
「鬼退師がいれば、恐さも半減するもんね」

 アッシュの言葉に、リオは不機嫌そうな表情になり、アッシュの足を思い切り踏みつけた。
 
「さあ、どうするんだ? 乗っててもいいんだぞ、乗ってても!」
「じゃあ、甘えさせてもらうか」
「決まりだな! もう鬼なんか恐くないからな!」

 自信ありげにリオが言うなか、アッシュが呟く。

「あ、鬼……」
「うわあああ! ままま守れコノヤロー!」

 リオは、ガクガク震えながら星乱の後ろに隠れ、しがみつく。
 
「えへ、冗談だよ?」
「恐がりすぎじゃないか?」
「二人共、斬っていいか?」