複雑・ファジー小説

Re: 【リオブルブル】◆鬼退師付き海賊銃乱戦風◆【第九論!】 ( No.52 )
日時: 2011/09/10 06:39
名前: 王翔 ◆OcuOW7W2IM (ID: uzXhjanQ)
参照: http://ameblo.jp/686-7777/

第十論  後編




セラは、涙目になりながら頭を抱えてぶるぶる震え始める。
 リオはそれを呆れたように一瞥して、むすっとして口を開く。

「もういい。何なら、私一人になろうがやってやる」
「まあ、俺も手伝わないことはないがー」
「そうか。じゃあ、頼む……」
「うむ、では……」

 星乱が杖を構えるが、突然しゃがみこむ。
 疲れたような表情で一言。

「体力が尽きた……」
「この役立たずが! もう一生寝てろバカー!」

 リオは、力の限り叫ぶと喰い人に向き直り、アサルトライフルを構える。
 さっと手をかざし、《人物情報》を呼び出し、《魔法》をタッチ。
 表示された文字のなかから、《火吹き放射》を選択する。
 赤い文字に囲まれた、アサルトライフルの引き金を引くと、赤い炎のような光が一直線に放射され、喰い人の身体を貫く。
 喰い人は、大きな奇声を上げ、長い龍のような身体を振り回すと、次の一撃を振り払う。
 さらに、大きく身を動かし、リオ目掛けて突進する。
 リオは、さっと後退し、さらに引き金を引く。
 喰い人は、身体を大きく動かし、回避する。そのまま、大きな尻尾をリオに向かって振り下ろす。
 リオに当たる寸前に、アッシュが先端に鋭い光を宿す短剣がセットされた銃剣で喰い人の尻尾を切り刻む。

「間に合ったぁ」

 アッシュは、ほっとした様子で胸を撫で下ろす。
 
「助かった……」
「うん。無事で良かったよ」
「さて、俺もやるかー」

 座り込んでいた星乱が立ち上がり、杖を構える。
 リオは、怪訝そうな表情をする。

「また体力がないとか言うなよ?」
「言わん」
「言いそうだが……」
「君こそ動きすぎて、胸が縮まんようになー」
「黙れバカ猫ーーーー!」

 激昂するリオを無視し、天冠は《対術》の《風乱》をタッチする。
 白い文字列が杖の周りに現われ、星乱は勢い良く杖を振るう。
 強い竜巻が巻き起こり、喰い人の身体を切り裂く。
 喰い人は、けたたましい雄叫びを上げ、長い身体を大きく振るう。
 それを喰らった星乱は、ゴロゴロと転がり続け、ようやく止まる。

「うー……もう動けん」
「はあ!? 情けない奴だな!」
 
 さらに、喰い人が尻尾を振り下ろそうとする。

「くそ……」

 喰い人と星乱の間に、リオが割って入りその一撃が直撃する。
 激しく身体が痛むなか、何とか体勢を保ち、リオは素早く《魔法》の《炎乱風》をタッチし、アサルトライフルの引き金を引いた。
 放たれた炎は、大きな風をなり、喰い人を襲い、その身体を焼き尽くす。
 ガラスを割り裂くような、巨大な破壊音が響き、喰い人は大きな断末魔を残して消え去った。
 
「やったか……」
「大丈夫かー?」

 立ち上がった星乱が、やや複雑そうな表情で尋ねる。
 
「大丈夫だ。お前こそ、体力ないんだろ?」
「二人とも大丈夫ですか!」

 隠れていたセラが、駆け寄って来て、《魔法》の《癒風》をタッチするとやわらかな風が巻き起こり、傷や痛みが残らず消え去った。

「あ、悪いな」
「いえ、私は、これぐらいしかできないので」
「ところで、金の花はどこかな?」

 アッシュの言葉で、思い出しリオは周囲を見回した。
 そして、光るものを発見した。
 拾い上げてみると、金色の花びらだった。

「花びらだけ、か……?」
「みたいだなー。さっきの戦いで散ってしまったのかもなぁ。まあ、珍しいものほど繊細で壊れやすいと聞く」
「……そう、なのか……」

 リオは、少し涙目でがっくりと肩を落とす。
 星乱はリオの肩をポンと叩く。

「船に戻るか」
「あ、ああ……」






 

                     ◆



 結局、収穫は金の花びらだけになってしまった。
 あれだけ苦労したというのに、どうもいたたまれない。
 リオは、甲板でため息をついた。
 
「な……何でだ……うう、姉上……」
「そんなに姉が恋しいのかー? 全く君は、甘えん坊だな?」
「なっ……! 星乱、お前いつから……」

 顔を真っ赤にして、恐る恐る質問する。
 星乱は、相変わらずぼーっとした表情のまま答える。

「さっきから、いたが?」
「何でいるんだバカ猫……、こっち見るな」

 リオは、ごしごしと目を擦る。
 
「くそ……格好悪い……」
「そうだろうか? 俺は、可愛いと思うが?」
「う……うるさいっ!」
「うるさいか。じゃあ、俺は戻る」
「だ……だから、待てって……一人にするなあ……」
「君は、こっちが引くと甘えるのか?」
「うるさいバカ猫ーーーーーーー!」